アルバム感想『New Sunrise』/ Fear, and Loathing in Las Vegas

New Sunrise
『New Sunrise』/ Fear, and Loathing in Las Vegas
2017.10.25
★★★★★★★★★★

01. Return to Zero ★★★★★★★★★☆
02. Before I Fail ★★★★★★★★★★
03. Power of Life and Death ★★★★★★★★★★
04. LLLD ★★★★★★★★★☆
05. To Catch the Right Way ★★★★★★★★☆☆
06. Interlude
07. SHINE ★★★★★★★★★☆
08. Set Your Goal ★★★★★★★☆☆☆
09. Accept Each Other’s Sense of Values ★★★★★★★★☆☆
10. Fight Against the Limit ★★★★★★★☆☆☆
11. The Sun Also Rises ★★★★★★★★★★

 

 

 神戸が生んだチャラリーモバンド・Fear, and Loathing in Las Vegas通称なんちゃらラスベガスの約2年ぶりとなる5thフルアルバム。

 これまで着手してきた類のものを継承したりアップデートしたり そこにまた刺激的なエレメントをプラスしたり そしてまた新たな境地を開拓したりと、方向転換することなく今回もガンガン攻めに走ってます。

 

 『Return to Zero』は本作のリード曲であるラスベガス流パラパラナンバー。トランシーなサウンドをコーティングしたハードコアというより、トランスとハードコアがしっかりハイブリッドしちゃってる感じです。トランスたるダンサブルさやチャラさもあるし、ハードコアたる疾走感も攻撃性もバッチリ備わってるという、初期ラスベガス路線をアップデートさせた格好で、今回も初っ端からかっ飛ばしてます。

 

 

 続く『Before I Fail』はゴリゴリなバンドサウンドで押す、前作の路線を継承した疾走アップナンバー。途中でダンサブルなパートを挟みはするものの、展開の切り替えはスムーズだし、全体的にも入り組んだ展開を用いないストレートなハードコア仕様ゆえ、カオティックさに脳をもみくちゃにされる感じではなく、直線的に駆け抜ける気持ちよさを楽しむ感じ。

 

 『Power of Life and Death』は、ボイスワークをシャウトやスクリームのみに絞って攻めまくるハードコア下地のレイヴミュージック。相変わらず多ジャンルを混ぜこぜにするわ、前曲と打って変わって怪力なリズム転換が挿入されるわ、それ以上に短い間隔で音の景色が目まぐるしく変貌するわと なかなか好き放題やっちゃってます。ボイスワークだけとっても相当のやりたい放題ぶりがスパークしちゃってますからね。歌詞カードがあるのにどこで何を歌ってるのか聴き取れないし、始終 絶叫が四方八方に撒き散らされていながらも、シンセなどの楽器がメロディアスなメロディを鳴らしているのがまたいいところ…というよりコレがこの曲の味の決め手になりました。私的にはこれが本作でいちばん好きな曲。

 

 『LLLD』は海外のチャート上位に入ってるようなダンスポップを意識した感バリバリの新境地ナンバー。なんとヒップホップ要素を導入してます。といっても、いわゆるミクスチャーロック的な仕上がりではなく、ヒップホップを取り込んだダンスポップをラスベガスなりのアプローチで以てバンドサウンド主軸で鳴らしてるって感じ。海外のダンスポップを普段あまり聴かない人や、ラスベガスに対して頑なにチャラリーモしか求めてないような人からすると「ヌルくなった」とか「路線変更しちまった」とか思われかねない楽曲ですが、私的には いいトコ突いたな、と。いつも絶叫ばっかしてるMinamiのラップが付け焼刃感なくしっかりヒップホップしててカッコいいし、ガッツリと海外仕様のダンスポップに着手してるかと思いきや中盤で凶悪なブレイクダウン入れてくるし、ちゃんとオリジナリティを維持しつつ新たなエレメントもしっかり咀嚼し消化(昇華)しているあたりはサスガ。

 

 

 『To Catch the Right Way』は久々のロッカバラードです。ストリングスが導入されてるのが何気に新鮮、そしてそれがしっかり楽曲内で有用してます。穏やかでおセンチな平歌、エモさ爆発なサビ、徐々にテンションを上げて結局暴走しちゃうブリッジという、一貫性あるメロディ展開とメリハリの効いた演奏・アレンジで聴かせてくれます。バラードとなると、他のアップナンバーや攻撃的なナンバー以上に純粋に良いメロディが書けることがポイントになってきますが、ラスベガスはそれがちゃんと出来るバンドですからね。まあ歌は相変わらずエフェクトが掛かりっ放しではあるんですけど。そして、こんなバラード系でもグロウルが顔を覗かせるあたりもラスベガスらしい。

 

 毎度おなじみの『Interlude』は、8bitサウンドで幕を開け、叙情的なピアノパート、疾走デジタルパート、ダンスフロアパートとコロコロ場面展開をしながらも上手いこと次曲へのバトンタッチを果たしているインスト。同じ8bitサウンド駆使のインストでも、バンドの演奏にフォーカスを充てた前作のインストとは対照的な作風ですね。

 

 先行シングル曲である『SHINE』は開放感あるダンスフロアナンバー。フロアミュージックとハードコアの融合というより、完全にフロアミュージック寄りで その骨格の部分をバンドサウンドで鳴らしてるっていう、前述の『LLLD』と同様の作りです。が、楽曲展開としてはこれといった転調は怪力な場面転換がないので、『LLLD』以上に物足りなさを感じてしまう人が多いかも。キャッチーかつシンガロングしたくなる歌メロ、ダンサブルなノリ、バンドサウンドの強度、TaikiとMinamiによるシャウトとスクリームの掛け合いなど、意識的に聴かずとも聴きどころは多々あるし、私的にはかなり好きな曲です。

 

 

 『Set Your Goal』は爽やかに駆け抜けるメロコアナンバー。メロディがちょっとアイドルポップちっくというか、初期SKE48みたいな爽やか切ない青春まさかり感を醸し出していて、そこが個人的にこの曲きってのフックでした。高速で疾走しながらも途中でマヌケ感溢れるリズムパートを挿入するというお馴染みのラスベガス節もしっかり効いてます。

 

 『Accept Each Other’s Sense of Values』は今作きっての変態ナンバー。この手の楽曲はアルバムに必ず一曲は収録されていますが、今回もかなりキテます。基本 疾走してますが、メロが変わるごとにテンポチェンジしたりブレイクダウンを挟んだりはもはや当たり前。そして同じメロが一度も再登場しません。各メロに関連性がなさげにもかかわらず、カオスでありつつもツギハギ感を感じないのは長年ポストハードコアに着手してきた その経験の賜物、ということなんでしょうか。まあでもこの曲いちばんのカオス要素は複雑な曲構成ではなくダンサブルでポップなサビメロにおける Kei(ベース)のボカロ風情のボーカルなんですけどね。このボーカルの効果でサビメロだけ雰囲気が思っきしお花畑です。

 

 『Fight Against the Limit』は なんかプロレスのテーマソングっぽいダンサブルロック。当然、このまま最後までバカ正直にプロレスロックを続けるわけもなく、怪力な場面転換を行うわけですが、終盤でセンチメントなミドルロックに転じる展開は流石に意外すぎで驚き。

 

 ラストの『The Sun Also Rises』は、まさに夜が明け日が昇るイメージをラスベガスならではのサウンドでしっかり具現化した 開放的で力強いアップナンバー。ピアノが夜明けの空の穏やかさと清々しさを、キーボードが燃えるように輝く太陽を象徴しているような感じですね。また、歌詞は全英詞ながらメッセージ性に富んでおり、「自分で選択した道が今の自分に繋がっているんだ」「理想の自分になるために勇気を持って厳しい道を選び進むんだ」と、リスナーや自分自身を鼓舞する言葉を投げかけてます。そんなメッセージも相俟って、ラストナンバーらしい感動的でキラメキに満ちたムードになってるというのに、中盤で突如 界王拳20倍を発動させたかのようなハードコアサウンドとMinamiのスクリームで叩きつけてきたり、終盤も綺麗に締めることなく暴力的に着地させたりするあたりが、結局のところ 様子がおかしい いつものラスベガス節で痛快なり。

 

 

 バンドの軸が一度もブレることなく、演奏の強度も増して新たなエレメントも盛り込みと、毎度毎度 刺激的でカオティックでありながらもイロモノに収まらないバンドとしての真っ当さもしっかり常備しているのが改めて驚異的だなと痛感。

 常に新鮮さや刺激が要求され続けるジャンルの上で、常にその要求に応え続け突っ走る…。Taikiのビジュアルがよりぶっ飛んだモノになったりパラパラの振付にまで手を出したりと最近では音以外の面で娯楽要素もガッツリ注入するようになったし、いやあチャラリーモってほんと命懸けのジャンルだな。今回も凄く良いアルバムでした。

 

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