アルバム感想『identity』 / 山本彩

identity(初回限定盤DVD付)
『identity』 / 山本彩
2017.10.4
★★★★★★★★★★

01. JOKER ★★★★★★★★★★
02. Wings ★★★★★★★☆☆☆
03. 夢の声 ★★★★★★★★★★
04. Let’s go crazy ★★★★★★★★★☆
05. ゆびきり ★★★★★★★★☆☆
06. サードマン ★★★★★★★★★☆
07. どうしてどうして ★★★★★★★★☆☆
08. 愛せよ ★★★★★★★★★☆
09. 何度でも ★★★★★★★★☆☆
10. 喝采 ★★★★★★★★★☆
11. 陸の魚 ★★★★★★★★★★
12. 春はもうすぐ ★★★★★★★★★☆
13. 蛍 ★★★★★★★★★☆

 

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 前作より約1年ぶりとなる山本彩ちゃんの2ndアルバム。

 今回も全収録曲のうち7曲で作詞曲を自身(共作含む)で手掛けており、残り5曲は外部提供、さらにもう1曲はドリカムのカバーが収められています。

 

 前作との違いや変化を挙げるならば、まず楽曲の幅が広がってます。それは自作曲、提供曲どちらにも言えることですが、楽曲そのもののタイプはもちろん、歌唱のキーにおける高さのレンジや声の深みが増したことも大きな変化。

 

 あと、前作が探り探りでの制作だったのか全体的にやや薄味でおすましな印象があったのですが、今回は一曲一曲がしっかりキャラ立ちしており、シングル単位でリリースしても申し分なさそうな華のある楽曲もいくつかあるのが強み。むしろCDやら配信やらで先行リリースをすりゃ良かったんじゃないのかという感じなのですが、これはまた運営の怠慢か何かの表れですかい?

 

 

 本作のトップバッターであり、リード曲でもある『JOKER』は、彼女自身が作詞曲を手掛けた瑞々しいアップナンバー。

 なんといっても、明るくも涙腺を揺さぶる珠玉のメロディが至高で、もはや会心の一撃と言ってもいいくらいの訴求力。躍動感に満ちたバンド演奏と高らかに鳴り響く弦楽器が初っ端から高揚感を煽り、そのイントロでの期待を裏切らないこのドラマティックさ!こりゃ名曲と呼ぶほかないでしょう。

 

 

 続く『Wings』はまさかのR&B系ポップナンバー。

 初期のBoAちゃんとか第一章EXILEなどを想起させるちょいと懐かしの音触りで、なんだか色んな意味で意外なチョイス。サビでチラッと魅せる綺麗なファルセットとビブラートが彼女の歌唱における成長の表れの一つであり、本作の他の楽曲でもちょいちょい姿を覗かせるちょっとしたオカズでもあります。打ち込みダンサブルナンバーですが、ライブでは当然生演奏。ダンスはしませんけどね。個人的にはバックにダンサーを従えてダンスを披露してほしいんですけども。

 

 

 『夢の声』は大原櫻子ちゃんが演ってもおかしくなさそうな いわゆる青春まさかり系のミドルポップロック。

 これはもう健気さと揺るぎない野心が潜んだ 清々しいボーカルが絶品!グッドメロディであることも相乗して年甲斐もなく胸にグッときちゃいました。こんな名曲がシングル化も先行配信もなく ただ単にアルバムの中の1曲として収まってるのは凄いんだか勿体ないんだか。

 

 

 『Let’s go crazy』はライブコンシャスな疾走アップナンバー。今年4月に開催されたAbemaTVライブでいち早く披露された楽曲ということで、ようやくのCD化ですよ。

 ライブでノれるリズムとか合いの手を入れる隙間とか、初聴の人でも即座に分かっちゃうくらいの親切設計なのですが、骨格が非常にしっかりしてる(特にドラムが上手い)のでコレ以上を特に求めようとはならないというか、早い話がシンプルで一切の無駄がない作り。100円ショップのメッセージカードとかデコレーション用品とか値段の割りになかなか侮れないじゃないですか。あんな感じ。…なんて言うとこの曲が安物みたいに捉えられちゃいそうだけど。

 

 

 『ゆびきり』は童謡『あめふり』(ピッチピッチちゃっぷちゃっぷらんらんらん♪の歌)を想起させる キュートなミドルポップス。

 なんか放課後ティータイムもこんな感じの曲を演ってたよな。二次元なんかにゃ負けへんで、という難波代表の腐女子による対抗意識の表れでしょうか。ライブではサビ締めの「ゆびきりげんま~ん♪」で指きりポーズをとったりしてます。

 

 

 『サードマン』『Let’s go crazy』同様4月のAbemaTVライブで先行披露されたしっとりバラードで、ろくろ首ばりに彩推しが首を長くしてCD化を切望していた楽曲。

 自身が経験してきた苦悩や葛藤を踏まえた上で綴られた 聴き手をそっと後押しする歌詞は、彼女の人となりを端的に表しているかのよう。また、この曲のサビでも綺麗なファルセットとビブラートを披露しており、ここでは隣にそっと寄り添うような温かさと優しさを伴って歌声と歌詞が胸に響いてきます。装飾が控えめということもあり、歌唱力と情感の込め方の双方がものをいう楽曲ですが、楽曲が設定しているであろうハードルの高さをしっかり越え、ダーツボードの範囲内を的確に捉えてますね。と、なんか歌にばっかスポットを充てちゃってますが、過剰にならないアレンジもナイスな塩梅で良きかな良きかな。

 

 

 『どうしてどうして』はツンケンする女性の可愛らしさやナイーブさが投影されたミドルロック。

 ガールズバンド、もっと言うとSHISHAMOを想起させる感じの楽曲ですね。女子ならではの魅力を打ち出しつつも、しっかりロック然としていて でもハードすぎず骨太すぎずな塩梅のサウンドを鳴らしてるのがいいです。『ゆびきり』とはまた違った可愛らしさですね。

 

 

 『愛せよ』は阿久悠が生前に遺した未発表歌詞に いきものがかり水野が楽曲を宛がったナンバー。

 なんか絢香の『I believe』とか思い出す作風のシリアスなバラードですね。歌い手が歌い手なら重く深淵な楽曲になり得ただろうし そういうのもアリだとは思うけど、彼女の歌はいい意味でライトタッチで、シリアスなムードの中でも柔らかさと温かみを感じます。楽曲のムードに呑み込まれることなく聴き手にどう言葉を届けようか歌った結果こういった仕上がりになった、ということでしょうか。まあそうは言っても本作中では異色のどっしりとした楽曲で存在感も説得力も十分。そして配置場所も絶妙。ただライブでは現時点(2017/11/10)で一度も披露されてません。どうやらセトリに組み込みにくい曲のようで。

 

 

 『何度でも』はドリカムのカバーで、ドリカムトリビュートアルバムに収録されていたものと全くの同テイク。

 原曲忠実なアプローチで臨んだ極めて手堅いカバーですが、「無難」でも「カラオケ」でも「劣化コピー」でもなく、きちんと「手堅い」に着地しているのが凄い。よくこの歌詞をちゃんと意味と説得力を持たせて、しかも吉田美和の絶対的存在感に押し潰されることもなく歌えているよなと感心したまで。まあストリングスはちょっと抑えめのほうがいいんでないかとは思ったけど。ちなみにラスサビ手前の「叫べえぇぇーーー!!!」のくだり、音源では叫び声は入ってませんがライブではみんな叫んでます、「うおぉぉぉぉっ!!!!!」って。

 

 

 『喝采』は本作中で1,2を争うほどにファン人気が高いスパイシーなロックナンバー。

 あべまこと阿部真央提供とは聞いてたけど、いやいやまさかここまで まんま あべま過ぎる楽曲がくるとはw 歌い回しもあべまたるピリッと感を継承した「さや姐」っぽさが効いてるし、イントロのジャカジャカしたギターまで超あべま節が炸裂しちゃってるし…ってそりゃまぁそこは あべま本人が弾いてるし。あべまが彩ちゃんに歌ってほしい類の楽曲というのが奇しくも彩ちゃん自身が歌ってみたかった楽曲であり、多くのファンが待ち望んでたタイプの楽曲でもあるという、願ったり叶ったりなナンバーです。ていうかCD化しなくてもいいから何かの番組やイベントで『サラリーマンの唄』の替え歌バージョンを披露してほしいな。彩ちゃんなら面白いの歌ってくれそうだし、この曲自体 汎用性の高い作りだから、そうやって活用してったほうがいいと思うんだけど。

 

 

 『陸の魚』は水面を揺蕩うイメージのしっとりバラード。

 これは歌、メロディ、歌詞、アレンジ、曲展開の連携ぶりが素晴らしいですね。心のインサイドの掘り下げをして悩み迷いながらも最終的には光に向けて歩を進めるという この一連の流れを各パートで体現しつつの連携。その中でも、アイドルとソロアーティストを両立している彼女だからこその葛藤と それを経ての決意表明が歌詞にアウトプットされてるのが見事。そしてそれを激情として外側に吐き出すのではなく、静かに内面で収束させ ゆっくりと歩き出すように歌い上げるあたりが彼女らしい表現方法。ソロアーティスト山本彩のアイデンティティがしっかり刻まれた名曲でしょう。

 

 

 いきものがかり水野が詞曲を提供した『春はもうすぐ』は いきものがかりでもやってそうな情緒豊かなバラード。

 彼女がボーカリストとして目覚ましい成長ぶりをここで魅せてます。奥ゆかしさが垣間見える歌唱は新たな魅力だし、終盤のハイトーンなんて昨年の彼女では酸欠を起こして歌い切れなかったんじゃないかって感じだしな。そんな心の襞に触れる歌唱と美しいメロディと しっかりドラマ性を有した仰々しいお馴染みの亀田アレンジが取り合わさってるんですから良い曲になる以外に道がない。感涙の一曲であります。

 

 

 ラストの『蛍』は哀愁が溶け込んだ和風ロックナンバー。

 ここでの彼女のボーカルは実にクールで艶っぽい。いい女感をそこはかとなく醸し出してます。そんなボーカルや平歌でうっすらと被さるコーラスがほんのりと儚さを引き立てています。流れるように疾走しフェードアウトする曲展開も相俟ってなんともカッコいい去り際。

 

 

 ということで、今回もプレイヤーとしての一面がクローズアップされることが最後までなかったのですが、クリエイターとして、そして何よりボーカリストとしての凄まじい成長ぶりが楽曲へと存分に反映されてますからね。単なるソロ2作目とか前作の続編とかではなく、これは前作から十分なステップアップを果たしたとハッキリ断言できる仕上がりです。豪華クリエイター陣による 期待に違わぬ手腕も多分に振る舞われた上質J-POP集であります。マストバイな一枚です。

 

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