アルバム感想『おいしいパスタがあると聞いて』 / あいみょん


『おいしいパスタがあると聞いて』 / あいみょん
2020.9.9
★★★★★★★★★★

01. 黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を ★★★★★★★★★☆
02. ハルノヒ ★★★★★★★★★★
03. シガレット ★★★★★★★★☆☆
04. さよならの今日に ★★★★★★★★★☆
05. 朝陽 ★★★★★★★★★★
06. 裸の心 ★★★★★★★★★☆
07. マシマロ ★★★★★★★★☆☆
08. 空の青さを知る人よ ★★★★★★★★☆☆
09. 真夏の夜の匂いがする ★★★★★★★★★☆
10. ポプリの葉 ★★★★★★★★★☆
11. チカ ★★★★★★★★★☆
12. そんな風に生きている ★★★★★★★★☆☆

 

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 約1年半ぶりとなる あいみょんのオリジナルアルバム。
 前作に引き続き、かつて渦巻いていた ひん曲がり様や露骨なメンヘラぶりなどの毒々しさは控えめで、楽曲も 90s J-POPから影響を受けた 普遍的なPOPS/ROCKがメインとなってます。が、前作に似通るでも続編的な内容になるでもなく、全体的にこれまでよりも雰囲気や鳴らされてる音が優しくなった印象を受けました。

 

 シングルにもなった『ハルノヒ』は、父親視点(というか野原ひろし視点)の家族愛を綴った歌詞にその傾向がハッキリ表れてるし、歌唱や演奏にも温かさがしっかり通底しているし、まさに優しさ代表といった感じの名曲であります。

 

 

 『シガレット』は お馴染みのダメ女ソングだなって感じだけど、あいみょんの歌唱はザラつきも くどさもないし、歌詞だけ見ると「開き直り」と取れる内容でも、穏やかなサウンドも併せて咀嚼すると、無理に断ち切ろうとせず「時が洗い流してくれる」と割り切って自分の今の気持ちに従順になってるようにとれるし、ひとえにダメ女ソングといっても決してヘヴィでシケたイメージではないんですよね。

 ほんで『さよならの今日に』は タイアップの影響なのか サビを聴くと「今日も一日お疲れ様でした」って感じで 歌の内容に関係なく気持ちが落ち着く笑。

 

 

 そして、「わたナギ」主題歌でお馴染みの『裸の心』は、『ハルノヒ』とはまた違った 優しさ(というより穏やかさ)代表って感じの四畳半バラード。歌詞は至ってオーソドックスな片想いソングですが、自身のピュアな想いをまるっと晒け出した的な 飾らない歌唱と、夕暮れ時に実家の和室でひとり物思いに耽ってるみたいな画が浮かんでくる ノスタルジックなフォークサウンドの効果で、綴られた言葉がドラマ性を伴って胸に泣きを訴えてきやがる。ストロボエッジの最終巻で仁菜子(ヒロインの子)が泣きながら蓮くんにコクるシーンが脳裏をよぎって、思わず胸キュンしてしまうほど。

 

 

 あとは『黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を』。なんかクリープハイプみたいな曲タイトルですけど、アコギを主軸としたアイリッシュ風味のシンプルなサウンドは軽快で風通しが良いし、初期から貫徹されてる「ギリギリでいつも生きていたいから」的な信念や矜持を改めて示した歌詞からは並々ならぬ熱気を感じるし、それでいてなんだか清々しい。なんというか、「ギラギラ」って感じではないんですよね聴感的には。勢いはあるけど、「軽やか」とか「滑らか」とか そういうソフトめな印象。

 

 個人的にはチャキチャキしたフォーキーなポップロック『朝陽』がベストな一曲。
 次から次へと溢れ出る想いを余すことなく吐露するかの如く、言葉を詰め込みまくっては 押韻を織り交ぜて 弾むように刻み付けるボーカルが ものっそくエモーショナルでグルーヴィーだし、間奏という間奏を設けず最後まで突っ走ってのく展開も相乗して実に爽快な聴き心地。歌詞は これまた ダメ男に翻弄されるダメ女ソングですが、押韻などのリズムワーク意識が高いこともあって、重たさ、湿っぽさ、辛気臭さはほとんど感じない。あいみょん史上最高を大幅に更新してしまった超絶名曲ですな。

 

 

 『チカ』もまたリズムワークに重点を置いた楽曲で、ファンクビートと 畳み掛けるような押韻が真っ当なポップサウンドの上でプラスアルファとして機能してます。

 

 ここまで書くと爽快な正統派ナンバーがやたら多めな印象を受けるかもしれませんが、本作には『真夏の夜の匂いがする』とかいう変態要素を秘めたナンバーもしっかり完備されてます。
 冒頭のカッティングギターとねちっこい効果音による 閉塞的かつ妖しげな雰囲気がほんのりと変態性を漂わせてます。こりゃ『愛を伝えたいだとか』系の密室ファンクナンバーだなと思いきや、サビではヤケクソ気味な爆走ロックに転じて個人的には「ありゃ?」という感じだったけど笑、歌もサウンドも痛快でよいよい。んでこれはパッと見 ひと夏の情事っぽい内容にも思えますが、恋愛に限らず広義の意味での「胸の隅にあった冒険心」に火をつけろ、真っ青に凍りついちゃう前に、という そういう歌なのだなって感じがしますな。

 

 

 『マシマロ』も音だけはストレートな疾走ロックですが、歌詞は率直に言って変態。童貞中高生の頭カチ割って溢れ出てきたフレーズをあいみょんの手癖で手直ししたって感じの マジどうしようもない妄想(もしくはソープランド初体験の感想)がひたすら描写されてます。

 

 

 『ポプリの葉』は↑とはまた別の意味でどうしようもなさに溢れた未練タラタラソング。『さよならの今日に』で「「もう一度」だなんて そんな我儘言わないでおくけどな」と言ってるそばから「もう一度もう一度あの日に戻ってやり直したいな」と ついつい我儘言ってしまう ダメ女っぷりを発揮していてアチャーって感じなんですけど、音だけ抽出するとそんな湿っぽさは皆無。そして、楽曲の雰囲気を印象づける 煌めきと瑞々しさを兼備したギターサウンドがほんと絶品。

 

 てな感じで、前述通り 総合的に「優しい」「柔らか」といった感触のナンバーが多いのですが、だからといって音楽自体がヌルくなったわけじゃないし、そんな中でも楽曲毎に異なる(中には過去作とも重複しない)アプローチが起用されているし、個人的には あいみょんの全ディスコグラフィーの中でもいちばん好きなアルバムです。あと、アルバムタイトルも良いですよね。変に身構えることなく ふらっと(もといフラット)な感じで手に取れる いい意味で軽い感じとか、万人を虜にするほどの高い求心力が備わってる感とか、そういったものが普遍的かつポップなタッチで表されているというか。

 

◆アルバム感想◆

1st Mini『tamago』
2nd Mini『憎まれっ子世に憚る』
1st Full『青春のエキサイトメント』
2nd Full『瞬間的シックスセンス』

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