アルバム感想『FRAGMENT』 / 藍井エイル


『FRAGMENT』 / 藍井エイル
2019.4.17
★★★★★★★★★☆

01. 約束 ★★★★★★★★★☆
02. SINGULARITY ★★★★★★★★☆☆
03. 流星 ★★★★★★★★★★
04. UNLIMITED ★★★★★★★★★☆
05. グローアップ ★★★★★★★★★★
06. 螺旋世界 ★★★★★★★★☆☆
07. パズルテレパシー ★★★★★★★★★☆
08. FROATIN’ ★★★★★★★☆☆☆
09. アイリス ★★★★★★★★☆☆
10. 今 ★★★★★★★★☆☆
11. フラグメント ★★★★★★★★☆☆

 

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 ベスト盤リリースと、約1年半間の活動休止期間を経てリリースされた4thアルバム。要するに、活動再開後 初めてリリースされたアルバムということです。

 

 道産子セイバーだのアニソン界のミステリーヴァージンだの 現実離れした異名を多々所有していたエイルちゃんですが、そんな中二染みた肩書きを下ろし、日常的かつ パーソナルな心象描写に務めた楽曲が過半数を占めています。

 

 活動再開して初めて世間に公開された楽曲であるロックバラード『約束』がまさしくそれですね。ヒロイックさとかクールビューティーとか そういったもんを一度取り外して綴られた歌詞には 三次元のリアルな人間らしい繊細さと芯の強さが刻まれています。まあ復帰一発目にこの手の歌を歌うのは非常にベタではありますけども、いつ何時でも強く在ろうと愚直に突き進んでるイメージが強いエイルちゃんが歌うとなれば、そのベタさすら好意的に受け止められます。おぼろ豆腐さながらのナイーブさだったり パワフルを意味する力強さとは別の 芯の強さだったりを的確に表現した歌唱も好印象だし。

 

 

 その他、歌も演奏もことごとく泣きどころをなぞりやがる『SINGULARITY』、カノエラナが提供した いい意味で気張りのないラフなアップナンバー『パズルテレパシー』、ピアノがバックで躍動するエモーショナルなポップロック『FROATIN’』、アレンジがアレンジならいきものがかりが演ってもおかしくなさそうな 水野良樹提供の陽性アップナンバー『今』、エイルちゃん自身で作詞作曲を手掛けたライブコンシャスな快活アップナンバー『フラグメント』など、多くの人が一度は抱くであろうネガティビティを吐露しつつ、それを肯定したり そこを終着点にせずポジティビティへと導いたりして リスナーに寄り添うような曲が多いですね。歌詞は特別ファンタジックな世界に置換せずストレートに綴られているものがほとんどだし、作風も中二臭さは皆無のオーソドックスなポップロックがメインになってるので、言葉が音やリズムとしてだけでなく、これまでよりも意味やメッセージ性を伴って響くようになってます。

 

 『螺旋世界』も歌詞に関しては上記ナンバーと大まかなテーマは通底してますが、アレンジ面でちょっとした工夫が施されてます。疾走アップナンバーでありつつ、ムードメイキングの鍵となるピアノとアコギがオシャンティーさを気取っているのが特徴的で、なおかつエイルちゃんの楽曲としては異例とも言えるイレギュラーなアプローチ。新鮮味を演出する傍ら、エイルちゃんの手口が決してオタッキー一辺倒ではないことも同時にアピールしてます。艶っぽい雫が滴り落ちるようなサビメロ締めの落とし方も 他の楽曲とはまた違う運び方でいいですね、なんだかそそられます。

 

 しかし、そうはいっても 藍井エイルのパブリックイメージは紛れもなく気高き女戦士であり、心機一転のもと復帰したと言えどアニソンフィールドが主戦場であることに変わりはないですからね。もちろん従来の路線に則ったナンバーに関しても抜かりなく押さえてあります。

 復帰第一弾シングルにもなった『流星』は、確立されて久しい藍井エイルのアーティスト像を改めて音像化したダイナミックかつブレイブリーなロックナンバー。このスケール感、溢れんばかりの情熱、中二病の患い様、いやいやカッコいい!寸分の狂いなくアニソンの正統派ど真ん中を突っ走ってるではありませんか!やっぱりエイルちゃんはこうでなきゃねと再認識した次第。

 フューチャリスティックなサウンドを塗布したマイナーアップナンバー『UNLIMITED』、主人公の健気な様と退廃的かつ力強いサウンドが密接にリンクしたシリアスミドルロック『アイリス』もまた佳曲なり。

 

 

 そして、本作でも特に異彩を放っているのが『グローアップ』。反抗期真っ只中の10代女子がモデルとなった くだけた歌詞といい、時折10代女子たる かったるさやナマイキさ、可愛らしさをチラつかせた歌唱といい、楽曲をブイブイとリードするベース、小粋なギター、ディスコティックなドラムが織りなす KEYTALKばりのダンサブルなファンキーサウンドといい、揃いも揃って曲者ばかり。特に凄いと思ったのがサビの幕開け直後。如何にも10代女子っぽい かったるそうな素振りをそのまま再現したかのような脱力系の変メロには「!?」ってなったし、そのメロと並んで カクカクと下降していくベースが変メロの変さをより強調していて、なんとも珍妙な味わい。エッジの効いた遊び心が楽曲の面白さに直結した傑作の一曲であります。

 

 

 トータル的に1曲目を除いて全てアップナンバーで固められてますが、高カロリーなナンバーはほんの数曲程度だし、随所に意欲的なアプローチを忍ばせていたので、胃腸の心配をせずに楽しめました。私的にはもちっとヒロイック成分があったほうが嬉しかったんですけども、エイルちゃんが演りたかったことと 私が求めてたものとのバランスがうまく配分されているし、お互い満足度が高位置で着地できたのであれば これが今現在におけるベストな仕上がりではなかろうかと。過去3作ともカラーが異なり、かつ過去3作に引けを取らない良作であります。

 

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