アルバム感想『CARROTS and STiCKS』 / BiSH


『CARROTS and STiCKS』 / BiSH
2019.7.3
★★★★★★★★★☆

[DISC-1]
01. DiSTANCE ★★★★★★★★★☆
02. 遂に死 ★★★★★★★★★☆
03. MORE THAN LiKE ★★★★★★★★☆☆
04. FREEZE DRY THE PASTS ★★★★★★★★★☆
05. CHOP ★★★★★★★★☆☆
06. I am me. ★★★★★★★★★☆
07. NO SWEET ★★★★★★★☆☆☆
08. O・S ★★★★★★★★☆☆
09. まだ途中 ★★★★★★★★☆☆
10. 優しいPAiN ★★★★★★★★★☆
11. アイデンティティ ★★★★★★★☆☆☆
12. FiNALLY ★★★★★★★★★☆
13. CAN YOU?? ★★★★★★★★☆☆
14. GRUNGE WORLD ★★★★★★★★☆☆

[DISC-2]
01. PAiNT it BLACK ★★★★★★★☆☆☆
02. Life is beautiful ★★★★★★★★☆☆
03. HiDE the BLUE ★★★★★★★★☆☆
04. NON TiE-UP ★★★★★★★★★★
05. stereo future ★★★★★★★★★★
06. 二人なら ★★★★★★★★☆☆
07. Small Fish ★★★★★★★★☆☆

 

スポンサーリンク



 

 約1年半ぶりとなる5thアルバム。タイトルの”CARROTS and STiCKS”は日本語で”アメとムチ”を意味するんだそうな。[DISC-1]がアルバム本編で、[DISC-2]が前作『THE GUERRiLLA BiSH』以降にリリースされたCDシングル・配信シングル・コンピ盤などに収録された楽曲を寄せ集めたものとなってます。

 

 本作リリースに先駆けて、2019年4月に”アメとムチ”のうち”ムチ”にあたる第1の配信EP『STiCKS』(『遂に死』『FiNALLY』『優しいPAiN』『FREEZE DRY THE PASTS』収録)が、2019年5月に”アメ”にあたる第2の配信EP『CARROTS』(『I am me.』『まだ途中』『CAN YOU??』『NO SWEET』収録)がリリースされましたが、私はどちらも未聴のまま本作を聴きました。その点を踏まえた上で本作の感想に目を通していただければって感じです。

 

 ひと通り聴いて思ったのは、前作『THE GUERRiLLA BiSH』で確立されたBiSHらしさが アメーバばりに不定形かつ歪に拡張されてんなということ。つっても音楽性自体は大きく変わってないんですけども、表現力(特にボーカル)の凄まじい爆発ぶりがそのままBiSHらしさの振れ幅に影響を及ぼしてる感じがしますね。狂気が迸った過激なアプローチもあれば、逆に今までにないくらいにどストレートだったり 優しさに満ちていたりなんてのもあって、生々しさを主軸にアングラっぽさも正統派もフルスイングで演り切ってるのが本作の聴きどころかなと。

 

 あと、歌詞の傾向として、主に人間の脆さや 綺麗事とは似て非なる恥ずかしいくらいにピュアな想いを抉り出し書き殴ったようなものが多いのが本作におけるちょっとした特徴。感情表現の凄まじい爆発ぶりは、個々のレベルアップだけでなく、それに触発されたのも大きな要因かもしれないですね。

 

 本作の幕開けナンバーである『DiSTANCE』でさっそく湧き上がっちゃってます。広大なスケール感と目映いメロディを有している点は前作のオープニングナンバー『My landscape』と共通していますが、「僕」の不安定かつ脆弱な心模様や、そんな「僕」が僅かな望みを見出して駆け出す様を描写したような荒々しいサウンドと より克明に体現した剥き出しのボーカルワークが これまでのどの楽曲ともどのBiSHとも異なる感触。それでいて これまで以上にBiSHを全うしており、実はまだ剥ぎ切れていなかった大きく分厚い殻をここでまたブチ破った感じがしますな。ユニットの顔とも言えるアイナのボーカルがまたとてつもないことになってんですわ。涙と鼻水と崩れたメイクがぐっちゃぐちゃになって顔中パレットみたくなってもお構いなし、ってくらいに 溢れ出る感情を一切制御せず思っきし吐き切ったような感じで。他のメンバーも歌唱力以上に表現力がグンと伸びていて、特にアユニなんて加入して間もない頃の のっぺりした歌いっぷりから大幅な成長を遂げてますから。楽曲自体の良さも然ることながら、メンバーの奮闘ぶりが味の決め手としてダイレクトに反映された佳曲であります。

 

 

 インダストリアルな絶叫や おっ立てた中指で鼻の骨をへし折っちゃうような尖ったボーカル、そしてひどくノイジーなサウンドが耳を劈く『遂に死』、混濁した意識を音像化したようなボイスワークやディストーションし放題のサウンドが実にサイケデリックな『FREEZE DRY THE PASTS』、挑発的なボーカルと獣じみたシャウトが並走するハードロック『O・S』、捲し立てボーカルで煽動するデジロックナンバー『FiNALLY』といった”アメとムチ”でいう”ムチ”に該当するナンバーでは過去最高を更新するほどの攻撃性を発揮してます。ファイナルファンタジーでいうティナが幻獣の姿に変身してトランス状態になってるようなイメージですな。

 

 

 情熱の中に切なさが見え隠れするアニソンライクな疾走エモロック『MORE THAN LiKE』、爽快な作風とは裏腹に泥臭く熱血なフレーズを詰め込んだ ファンキーなカッティングギターと遊泳するようなベースがリードする疾走ポップロック『I am me.』、青春まさかりチックな雰囲気のメロコア『まだ途中』、明朗快活どストレートなロックサウンドの上で 自問自答を繰り返し自己嫌悪に陥る様を歌った『アイデンティティ』、いつぞやのFACTが演っていたような大味メロコア『CAN YOU??』といった BiSHの中ではざっくりとポップサイドに分類されるこれら楽曲は 歌詞もサウンドも驚くほど直球。どの曲でも苦悩や弱さを包み隠さず曝け出しており、最終的な着地点や行き先がポジティブだったとしても必ずそこを経由しているのが生々しさやリアリティを大事にするBiSHらしさの表れですね。

 

 

 エレクトロアレンジが施されたダンサブルロック『CHOP』、まるでクソを出し切った後の腸内のようなイメージの優しさバラード『NO SWEET』、『SICKS』期のイエモンを想起させるザラツキと重低音の効きが特徴的な薄汚れたオルタナロック『優しいPAiN』、Dragon Ash『Viva la revolution』を思わせるメロディアスなラップボーカルが新鮮なミドルロック『GRUNGE WORLD』といった楽曲達も安易に安心安定に安住しない佳曲でこれまた中々。ポップな楽曲がそこそこ多めに収録されているのに、総合して保守的というイメージに着地しないのは何気に凄いかも。

 

 

 ほんで[DISC-2]。ネガティビティを黒く塗りつぶす正統派ロックナンバー『PAiNT it BLACK』、楽曲の核となっているギターサウンドが聴き手に安らぎを齎す透明感あるロックバラード『Life is beautiful』、躍動感もスケール感もたっぷりの瑞々しいピアノロック『HiDE the BLUE』、まるでラスボス戦のBGMみたく重厚シリアスなサウンドをバックに「おっぱい舐めてろ チンコシコってろ」(歌詞表記まんま)とシャウトするBiSH史上最大の問題作『NON TiE-UP』、『プロミスザスター』が白ならばこちらは黒に相当する BiSH鉄板スタイルの壮大シリアスアップ version2018『stereo future』、感傷を孕んだ煌びやかなメロコアナンバー『二人なら』、力強さと儚さが混在したヒロイックなメロコアナンバー『Small Fish』と、収録曲の過半数がシングル曲にもかかわらずこの濃厚なラインナップ笑。ゲリラリリースされたシングル曲『NON TiE-UP』がハブられることなくちゃんと収録されてるのもいいし、リリース順の羅列に過ぎないとはいえ、BiSHにしては優等生に位置づけられる3曲連チャンの後に配置されてるのも痛快。BiSHの棘の部分を維持するために『NON TiE-UP』を演ってるんじゃなく、『NON TiE-UP』で世間をアッーと言わせたいがために『PAiNT it BLACK』『Life is beautiful』『HiDE the BLUE』といったタイアップ先に合わせた正統派ナンバーを演ってる感じがするのも好感が持てる…って実際のトコはよう分からんけども。

 

 

 ただ奇抜なことを演ってるというイメージが強かった旧BiSとは別の道を行き、リアリティや生々しさに重点を置いたロックサウンドとパフォーマンスで独自のルートを開拓、そして自分たちの強みであり他のアイドルユニットにはない個性をさらに強化したことで BiSHブランドを確固たるものにしたアルバムであります。素晴らしい…と言いつつ、私的には楽曲の好みやアルバムの胸熱な流れなどの関係で前作のほうが好きなんですけど。

 

スポンサーリンク




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です