アルバム感想『HELP EVER HURT NEVER』 / 藤井風


『HELP EVER HURT NEVER』 / 藤井風
2020.5.20
★★★★★★★★★★

01. 何なんw ★★★★★★★★★☆
02. もうええわ ★★★★★★★★☆☆
03. 優しさ ★★★★★★★★★★
04. キリがないから ★★★★★★★★★☆
05. 罪の香り ★★★★★★★★☆☆
06. 調子のっちゃって ★★★★★★★★★☆
07. 特にない ★★★★★★★★★★
08. 死ぬのがいいわ ★★★★★★★★☆☆
09. 風よ ★★★★★★★★★☆
10. さよならべいべ ★★★★★★★★☆☆
11. 帰ろう ★★★★★★★★★★

 

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 岡山県 里庄町出身の男性シンガーソングライター・藤井風(ふじいかぜ)の1stアルバム。

 

 配信でリリースされていた楽曲(『何なんw』『もうええわ』『優しさ』)がどれも好印象だったので 今回のアルバムにも勿論 期待していましたけど、いやもう何なんw 名曲佳曲がこぞってるのは当然の話として、あなた本当に新人ですかと、本当にこれでまだ22歳なんかと おったまげてまうくらい熟練された風格がこの一枚にもう備わっちゃってるじゃないすか。

 

 まず、音楽性としては ざっくり言うとアーバンポップス。ジャズやらクラシックやらR&Bやら歌謡曲やら、「古き良き」も「トレンド」もお構いなしに色々と咀嚼してシャレオツなポップスとしてアウトプットしてる感じ。藤井くん自身の手によるメロディはことごとく洒落てるし、ピアノも上手いし、そういった強みがしっかり活かされてるのが良いですな。

 

 ほんで歌唱。単純に歌が上手いのは勿論、アーバン系を歌うなら なくてはならない色気がしっかり備わっているんですが、ビジュアル的にも声的にもハイスペックイケメンのくせして 敷居の高さをまったく感じさせないんですよね。「なんていうんですか親近感」と言いたくなるほど 近所のあんちゃんっぽさが滲み出てるというか。大半の楽曲から汲み取れる 人柄と土地柄に由来しているかのような柔らかさや温かさがそのイメージを立ち昇らせているんでしょうなきっと。この男、歌声だけでもうオリジナリティを確立しちゃってるじゃないですか。

 

 あとやっぱり凄いのが 歌詞というかフレーズチョイスのセンスだな。曲タイトルを見ただけでも察しがつくかと思いますが、訛り混じりの口語表現が臆面も奇の衒いもなく用いられてます。こんな泥臭いフレーズセンスがシャレオツなサウンドに浮くことなく溶け込んでることに驚き。デビュー曲である『何なんw』でそれが顕著なんですけども、「それは何なん 先駆けてワシは言うたが」だの「あの時の涙は何じゃったん」だの 訛り歌詞が 英語詞に空耳しちゃうほど滑らかにメロディの上に乗っかってるんですよね。

 

 ということで、デビュー曲にして本作のオープニング曲でもある『何なんw』がいきなり素晴らしい。このタイトルから こんな洗練されたジャジーなアーバンポップの音像を 一体誰が連想できようか。↑で先に言っちゃいましたけど、あからさまな異物である訛り歌詞を異物感なくスムーズに聴かせる歌唱が実に秀逸ですな。

 

 

 

 アルバムリリースに先駆けて配信された『優しさ』は、90s R&Bの様式に倣ったようなミドルバラード。サウンド然り、独特の口語表現を控えた歌詞然り、盤石の作りゆえに胸の奥底にまで沁み渡るようなふくよかな歌唱がとりわけ際立った存在感を放ってます。さすが、「やさしさが実感できるまち 里庄町」出身の男、藤井風。2020年代のJ-R&Bクラシックとして後世に聴き継がれていく予感大の名曲ですな。

 

 

 

 そして本作リリースでめでたく初解禁となった『キリがないから』は、既発曲とはイメージが異なるクールなR&Bナンバー。レトロフューチャー的なシンセを駆使したスペーシーなサウンドがあまりに意外でちょっと驚いちゃいましたけど、歌はいい意味で相変わらずというか、こんなにトラックがカッチリしてんのに 立ち振る舞いがやたら軟い笑。楽曲のムードも相俟って、果ての見えない宇宙空間を流されるままに彷徨ってるような浮遊感を味わえます。「ルララ宇宙の風に乗る」とはまさにこのことですな。

 

 

 

 グランドピアノが置いてあるバーで流れてそうなサウンドをバックに 蕩けるような歌声で「調子のっちゃって」だの「裸のまま透明な服を着た王様だ」だの場違いなフレーズを歌ってしまう芳醇なソウルナンバー『調子のっちゃって』も22歳らしからぬシャレオツ感と渋みがあってカッコいいし、ピアノサウンドを前面にフィーチャーしたポエティックバラード『風よ』なんてジャジーなアレンジはもとより そもそもメロディラインからして渋くてくっそアダルティだし、(特に英語詞パートにおける)気怠そうな歌いっぷりがやけにセクシーなR&Bナンバー『特にない』は子猫ちゃん誑かしソングとして申し分ない仕上がり。

 

 

 

 その他にも、投げやりというより達観の境地に至った感が垣間見える ヒップホップライクの澱んだミドルスロー『もうええわ』、熱気ムンムンなホーンセクションが迸るジャジーかつファンキーなアレンジと、80年代のサザンオールスターズを想起させる歌謡メロとの掛け合わせが実に濃厚な『罪の香り』、「針でもなんでも飲ませていただきMonday」なんてギャグを忍ばせつつ 重たい愛を綴った歌詞を ダウナーかつ緩やかなグルーヴで以て歌い上げた トラップビート駆使のミドルスロー『死ぬのがいいわ』、夢追い人の真っ直ぐで不器用な心情を泥臭いままに歌い上げた歌謡ロック『さよならべいべ』なんて佳曲たちを畳み掛けてきますが、ラストの『帰ろう』が全てを持っていっちゃいます。理不尽や不可抗力の事象によって受けた心の傷も何もかも全て浄化させるようなカタルシスに溢れた圧巻の名バラードでこれは必聴すぎる。

 

 

 

 こりゃ紛れもなく名盤でしょうー!そして、私なんぞが言うまでもなく、藤井くんは今年のミュージックシーンにおける台風の目になりそうな感じが。普段着なのにやたらスタイリッシュ。ワン&オンリーのスペックを有している上に万人ウケさせられるだけの普遍性までもバッチリ完備。そして嫌味や近寄りがたいオーラがないイケメンぶり。素晴らしいじゃないすか。今後の藤井くんの活動はもちろん、本作を含めた藤井くんの音楽が日本のミュージックシーンにどう影響を及ぼすのか、いろんな意味で楽しみ。

 

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