アルバム感想『20200101』 / 香取慎吾


『20200101』 / 香取慎吾
2020.1.1
★★★★★★★★★☆

01. Prologue(feat.TeddyLoid&たなか) ★★★★★★★★★☆
02. Trap ★★★★★★★★☆☆
03. Metropolis(feat. WONK) ★★★★★★★★★☆
04. welp(feat. 須田景凪) ★★★★★★★★★☆
05. I’m so tired(feat. 氣志團) ★★★★★★★☆☆☆
06. ビジネスはパーフェクト(feat. スチャダラパー) ★★★★★★★★☆☆
07. Neo(feat. yahyel) ★★★★★★★★★☆
08. 嫌気がさすほど愛してる(feat. KREVA) ★★★★★★★☆☆☆
09. OKAY(feat. SALU) ★★★★★★★★★☆
10. 10% ★★★★★★★★★☆
11. Now & Forever(feat. SONPUB&向井太一) ★★★★★★★★★☆
12. FUTURE WORLD(feat. BiSH) ★★★★★★★★☆☆

 

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 皆さんご存知、SMAPの最年少メンバーである香取慎吾の1stアルバムであります。ちなみにタイトルは「20200101」と書いて「ニワニワワイワイ」と読みます。

 

 遂にここまで来たか!って感じですね。SMAP解散から3年、ジャニーズ退所から約2年3ヵ月という歳月や、そこから幾度となく不遇の扱いを受けてきたことなんかを思うと感慨深さも一入だし、その上今回は慎吾自身が能動的に制作にまで関与して音楽活動に取り組んでるわけですから、嬉しいったらないのですよ。

 

 本作では、WONK, 須田景凪, 向井太一といった新進気鋭のアーティストや、氣志團, スチャダラパー, KREVAといったベテラン勢など様々なメンツが制作に携わっており、そういった豪傑なキャスティングという点では晩期SMAPのアルバムと共通しているんですけども、関わり方が違うんですよね。SMAPの時は一部を除いてほとんどが「楽曲提供」という形で数多のアーティスト達が関与していましたが、こちらはアーティストと慎吾が共同で制作に取り組み、さらに10曲中8曲でボーカル、ラップ、コーラス、演奏など何らかのカタチで参加アーティストとコラボレーションしているのが大きな特徴。それゆえに、どの曲でも各アーティストの持ち味が従来の楽曲提供以上に色濃く表れています。

 

 んで、サウンドとしては、エレクトロ・ファンク・R&B・ソウル・ヒップホップといったブラックミュージック・クラブミュージック寄りの要素を主に持ち込んでおり、それをJ-POPとしてアウトプットしているものが大半を占めてます。それでいてどれもトレンド感をしっかり押さえてます…って、ジャンルがジャンルなんでまあ当然の話ではあるけど、その結果としてイマドキのJ-POPを集約したような印象があり、2020年代J-POPの指標となり得る作品が出来たんではないか、と思ったわけです。

 

 よくSMAPは歌が下手だの何だの言われてますけども、いやいやとんでもないっすわ。そりゃ慎吾が技術面において歌唱力に長けてるとまでは言いませんけども、この手のリズム感やセンスを要する楽曲達に対して一つ残らずしっかり順応できているのを耳にしたら 下手だなんて微塵も思うわけないじゃないすか。サウンドと慎吾の声質との相性も良いし、そもそも慎吾の声ってSMAPの中でも特に人懐っこさがあるから 歌唱力云々以前に多くの人の耳に馴染み易いんだと思うわけです。そうじゃなきゃSMAPの楽曲ってここまで長年に渡って多くの人から支持される存在にはならなかったんじゃないかなと。

 

 あとラップもめっちゃ良いっすね。このアルバム聴いて慎吾のラップにおけるポテンシャルの高さに今さらながら気づかされました。

 てゆーか、考えてみたら SMAPの楽曲でも 慎吾が参加したラップの名演めっちゃ多かったですもんね。『M・A・S・H』とか『Let’s go to 週末ヘヴン』とか『恋があるから世の中です』とか『俺様クレイジーマン』とか『living large』とか…って、律儀に一曲一曲挙げてたらキリないわアホ!!しかも今挙げた5曲だけでもラッパー香取慎吾のキャラクター性は多種多様。その多面性や柔軟性が本作のラップパートでしっかり発揮されているので、そこもセールスポイントのひとつですな。

 

 オープニングを飾る『Prologue(feat. TeddyLoid&たなか)』は、ちょっとトロピカルハウス成分を含有したポップなEDMナンバー。音の鳴りのみならず、節回しもココ最近のクラブミュージック的な感じで、Bメロでは海外勢の猿真似っぽさ皆無の流麗なボーカルワークを披露してます。あと、感傷が滲んだサビのメロディを高らかに歌い上げてるのもいいっすよね。ジャニーズを離れ、新天地でリスタートする意気込みを詰め込んだ歌詞と相乗して 力強く翼をはためかせている感じがするというか。

 ちなみにTeddyLoidは海外アーティストっぽい名前してるけど 実際は純然たる日本人で、エレクトロなどクラブサイドの音楽を手掛けることが多い音楽プロデューサー。一方 たなかは、元「ぼくのりりっくのぼうよみ」の人。

 

 

 男性ラッパー・SALUをフィーチャーした『OKAY(feat. SALU)』はミドルテンポの着飾りないヒップホップナンバー。「それでも僕ならBe okay」「何が起きててもBe okay」というサビはすこぶるキャッチーかつグルーヴィーだし、平歌でも押韻や言葉のハネ方を抜かりなく意識していて 終始最高の耳心地。

 あと、この曲の歌詞は言葉や節回しのグルーヴ感だけじゃなく内容自体も凄く良い。ジャニーズを退所しても笑顔がビジネス仕様であっても どうしようもなく陰な一面が渦巻いていても やっぱり香取慎吾はプロのアイドルだし日本を代表するスーパースターなのよねってことがしっかり刻まれているし。

 

 

 『I’m so tired(feat. 氣志團)』はクラブ要素を取り込んだ楽曲が多い本作では異色のビッグバンド風歌謡アップナンバー。賑やかでケバいサウンドを鳴り散らかしながら「愛情とかうんざりなんだ」「才能ないや 見限ってくれよ」「可哀想だと蔑めばいいさ」と ビジネススマイルの裏側を包み隠さずぶちまけてます。

 

 

 打って変わって『ビジネスはパーフェクト(feat. スチャダラパー)』は慎吾のパブリックイメージに近しい陽性オーラが出たヒップホップナンバー。100%いい意味でご期待通りのユルいノリと 歌詞にもある通りのワイワイした雰囲気がとにかく楽しい。
 てかサビの後に出てくる「Clap your hands everybody!」ってどっかで聴いたことあるな~と思ったら、そうでした『夏楽園~clap your hands~』(アルバム『SAMPLE BANG!』収録)だわ。コピペしてんじゃねーか?ってくらいに歌い方がまんますぎるんですけども、狙ってやってんのかこれは!?

 

 

 これ以外にも、作風としては本作で最もSMAPのアルバムやカップリングにありそうな感じがするスムーシーなダンスナンバー『Trap』、喧騒をすり抜けるかのようなニヒリスティックなフロウが耳を惹く 煙たいアーバンソウル『Metropolis(feat. WONK)』、退廃的なオルタナティブR&B『Neo(feat. yahyel)』、変態的な打ち込みリズムとノリ偏重の躍動感溢れるフロウが狂騒する『10%』、明け方の空の如く 開放的かつ徐々に光が差し込んでくるようなイメージのトロピカルハウス『Now & Forever(feat. SONPUB&向井太一)』といったクラブ要素を含有した楽曲は耳やカラダに負担なくノれるし、メランコリックな四畳半ミドル『welp(feat. 須田景凪)』は日常に溶け込むような素朴さが沁みてくるし、慎吾とKREVAのラップバトルも設けられた ドロドロしく仰々しいヒップホップナンバー『嫌気がさすほど愛してる(feat. KREVA)』といったアクの強い楽曲があるのも良い。

 

 

 そしてトリを飾る『FUTURE WORLD(feat. BiSH)』は新章の幕開けを予感させるような壮大かつメロディアスな楽曲で、BiSHでいう『プロミスザスター』系統の作風。新たなフェーズで再度歩み出そうとする気概が込められている、という意味では一曲目と同様ですが、こちらはSMAPが解散してからここにたどり着くまでの苦悩がクローズアップされてる印象なので、ラストナンバーではあるけど『Prologue(feat. TeddyLoid&たなか)』のプロローグに相当する楽曲という感じがしますね。

 

 

 いやいやすごい本腰の入れようじゃないですか。慎吾の趣味嗜好が由来した楽曲がこぞっていたり、赤裸々な思いが至る所で綴られていたりしながらも、単なる自己満作品にも内省的な作品にもならず、遊び心も存分に注入して抜群のエンターテイメント性が備わってるのがまた素晴らしい。

 

 決してSMAPの一人バージョンと安易に換言できる音楽ではないけど、慎吾ファンでなくとも今までSMAPを聴いてきた人達にも是非 敬遠せず聴いてほしいアルバムです。『SHAKE』とか『たぶんオーライ』とか『Fly』とか、SMAP時代にもブラックミュージックを汲んだ楽曲に何度も着手してるし、2012年には山Pと『MONSTERS』でコラボも実現してるし、いくらゼロからの再スタートを切ったとは言っても、SMAPでの経験は少なからずこのアルバムにも反映されてるわけですからね。まさに「真っ新に生まれ変わって人生一から始めようがへばりついて離れない地続きの今を歩いている」ってやつですよ。めっちゃ気に入りました。てか聴いてる間ずっとこんなにワクワクさせられることになるとは思ってもなかった。

 

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