アルバム感想『CANNONBALL RUNNING』 / 水樹奈々


『CANNONBALL RUNNING』 / 水樹奈々
2019.12.11
★★★★★★★★★★

01. Higher Dimension ★★★★★★★★★☆
02. カルペディエム ★★★★★★★★★★
03. Love Fight! ★★★★★★★★★☆
04. DAYBREAKERS ★★★★★★★★★★
05. Knock U down ★★★★★★★☆☆☆
06. BLUE ROSE ★★★★★★★☆☆☆
07. Sweet Dealer ★★★★★★★★☆☆
08. WHAT YOU WANT ★★★★★★★★★☆
09. マーガレット ★★★★★★★★☆☆
10. METANOIA -Aufwachen Form- ★★★★★★★★★★
11. glitch ★★★★★★★★★☆
12. NEVER SURRENDER ★★★★★★★★☆☆
13. Light Births Shadow ★★★★★★★★★★
14. REBELLION ★★★★★★★★☆☆
15. UPSETTER ★★★★★★★☆☆☆
16. ALL FOR LOVE ★★★★★★★★☆☆
17. FINAL COMMANDER -Aufwachen Form- ★★★★★★★★★☆

 

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 オリジナルとしては約3年ぶりとなるアルバム。

 

 まず、タイトルが凄いですね。『CANNONBALL RUNNING』。字面だけでも目を惹きますけど、なんでも「弾丸のように駆け抜けてきた」自分自身を表し、かつ「その後も変わらず“走り続けていきたい!”」という気概を込めたワードだそうな。前回(『NEOGENE CREATION』)ひたすら走りまくりな楽曲を詰め込んだアスリート気質のアルバムを出しておいて まだ走るんかいと。しかも弾丸のように駆け抜けますからね。もはやウサイン・ボルトを凌駕する勢い。さらに言っちゃうと、デビューしてから20年近く活動休止なしでずっと走りっ放しですよ。いったい地球何周分のマラソンを続けとんねんと。ここまで来ると、怪物とかサイヤ人とかそんな言葉で形容しても物足りなく思えてきちゃうな。

 

 そして、アルバムの内容もおったまげ。サブスクが普及して久しい昨今、曲単位でもアルバム単位でもコンパクトに収めるスタイルがデフォになりつつあるというのに、なんと全17曲入り!トータル約69分!その上、全体通じてバラエティに富んでると言えど、メインとなっているのが案の定ヒロイック系HR/HMやシンフォニックアップナンバーで相変わらずの高カロリーぶり!

 

 鉄板のシンフォニックサイバーアップ『DAYBREAKERS』、セピアの音色で郷愁と背徳感を醸成するアコーディオンが楽曲の雰囲気を支配する歌謡アップナンバー『BLUE ROSE』、扇情的なハードロック『WHAT YOU WANT』、過去最高レベルでバイタリティに満ち溢れたサキモリッシュ・メタルコア『METANOIA』、渋みと美しさが絡み合ったツインギターがリードするアーシーなダンサブルロック『glitch』、いつにも増してドレッシーな装いのヒロイック歌謡アップ『NEVER SURRENDER』、耽美さ際立つブレイブリーアップ『REBELLION』、大仰アレンジのスペシャリスト・菊田大介の手腕が鬱陶しいまでに振る舞われたNANA MIZUKI流ファンファーレ『FINAL COMMANDER』あたりがまさにそれですね。深みを増していたり より一層エッジが効いていたりと、これまで演ってきたことをアップデートした上でドロップしてくるのが奈々さんらしい。相変わらずだけど現状維持を許容しない。これが奈々さんなりの「変わらないために変わり続ける」というやつなんでしょうか。奈々さん自作である イマドキ珍しいくらいストレートな応援ソング『UPSETTER』も昔からなんら変わらん奈々さんらしさが表出してますな。

 

 

 毎度お馴染み上松範康提供の『カルペディエム』は、ピアノロックに華麗なストリングスやメタル要素を注入した絢爛なアップナンバー。初っ端から優雅にお狂いになられて(二重敬語)いる上に、始終メロディに言葉を詰め込みまくっては、本音と建前の間で葛藤する様をミュージカルタッチで歌い上げるこの荒くれ様。変態紳士もとい変態淑女と称すべき名曲の爆誕であります。

 

 

 ほんで、先ほどヒロイック系HR/HMやシンフォニックアップがメインとか 相変わらずの高カロリーぶりとか書きましたけど、そんな楽曲ばっかではございません。

 

 オープニングを飾る『Higher Dimension』は爽快かつ活気に富んだファンキーなポップソングで、やたら壮大さを醸し出していたり 先制攻撃を仕掛けるかのような楽曲で幕開けすることが多い奈々さんのアルバムの中ではちょっと変わったアプローチ。この曲の着目ポイントはサビにおける奈々さんの高音ボーカル。デビュー20周年間近にして過去最高を更新する勢いの天井知らずなハイトーンをぶちかましてきてます。しかも思っきしビブラートをかけてきながら。奈々さんの声技ひとつでかつてないまでの開放感を演出した佳曲であります。

 

 

 『Love Fight!』は、ハロウィンとかアダムスファミリーとか あんな感じのダークファンタジー的な雰囲気のポップソングで、キラキラキュートなイメージを喚起させるタイトルとの乖離ぶりに驚き。サビの「1shot! 2shot!」のくだり、ハネたリズムの影響もあって「1shot!」が「ワッショイ!」にしか聴こえません。マヌケ感が漂っていて これまたオモロ。

 

 曲配置的に エッジーなアップナンバーに挟み撃ちされてる『マーガレット』は、穏やかなボーカルとリズミカルなアコギサウンドがメインとなった オーガニックなミドルナンバー。上記の楽曲達と違い 低カロリーかつ無添加という全人類に優しい作りで、これまた中々の佳曲なのですが、何故今までこの手の楽曲が登場しなかったのか不思議でもあります。別に今だからこそ歌える曲って感じでもないですもんね。10年前の奈々さんの声や実力でも普通に歌えるやんかと。

 

 

 そして『ALL FOR LOVE』は満を持して登場したバラード曲。スケールのデカいラブソング感バリバリの歌詞に相応のオーソドックスな作風で、それ以上でもそれ以下でもないニュートラルな塩梅に着地してるのが却って良いです。本作にバラードはこれ一曲しかないからシンプル指向でも十分映えるし、これ以上余計な味つけや こねくり回しがあると くどくて敵わんですからね。

 

 その他、これまでにはない感触のファルセットで歌う 肩肘張らないオールディーズ・ロック『Knock U down』、妖艶さを纏ったソウルナンバー『Sweet Dealer』、とびきりのキラメキを放つ流麗な鍵盤が切なさと懐かしさを呼び起こすアイドルライクなポップナンバー『Light Births Shadow』と、サイドメニューにあたる楽曲も抜かりがなくて 単品で嗜んでも良きかな良きかな。アルバム全体のバランス調整役を担ってはいるけど、単なる穴埋めに留まってはいないというか。

 

 

 10年前の今くらいに「10年後もどうせ奈々さんの演る音楽は今とさほど変わりゃせんだろ」とか思ってましたけど、実際に10年経過してみて本当その通りになっちゃってるから、改めて考えてみると かなり くりびつてんぎょう。そりゃ色っぽさとか円熟味とか増してはいますけど、体型もほとんど変わってないしライブで着てる衣装もやっぱ方向性に変わりはないし、しょこたんじゃないけど 40という年齢も単純にレベルの数値として機能してる感があるのが本当に驚異的。「老化」とか「衰え」とか そういうキーワードとは一切無縁で未だに進歩し続けていて 一体どこまで行くねんと言いたくなってしまいますな。ということで、個人的にかなりの快作でした。中でも『カルペディエム』『DAYBREAKERS』『METANOIA』『Light Births Shadow』が特に好印象でした。

 

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