アルバム感想『HYBRID UNIVERSE』/ 水樹奈々

HYBRID UNIVERSE(DVD付)
『HYBRID UNIVERSE』/ 水樹奈々
2006.5.3
★★★★★★★★★★

01. 残光のガイア ★★★★★★★★★☆
02. Faith ★★★★★★★★☆☆
03. WILD EYES ★★★★★★★★★☆
04. You have a dream ★★★★★★★★★★
05. BRAVE PHOENIX ★★★★★★★★☆☆
06. 星空と月と花火の下 ★★★★★★★★★★
07. SUPER GENERATION ★★★★★★★★★☆
08. NAKED FEELS ★★★★★★★★★☆
09. Love Trippin’ ★★★★★★★☆☆☆
10. Late Summer Tale ★★★★★★★★★★
11. Violetta ★★★★★★★☆☆☆
12. PRIMAL AFFECTION ★★★★★★★☆☆☆
13. ひとつだけ誓えるなら ★★★★★★★☆☆☆
14. ETERNAL BLAZE ★★★★★★★★★★

 

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 矢吹俊郎氏に代わり、上松範康氏などが在籍する音楽クリエイターチーム・Elements Garden(以下エレガ)が実権を握るようになった5thアルバム。

 

 過去作で着手していたような楽曲も少なからずありますが、アイドルっぽい楽曲が減少したり、あからさまな時代錯誤感がほぼほぼ解消されていたり、非現実的な壮大さとヒロイックさを兼ねた楽曲が増えたりと、この辺りからアーティスティックな作風へとシフトし、それと同時に現在すっかりシーンに定着した「2000年代以降のアニソンスタイル」「声優アーティストによるアルバムのいちフォーマット」の礎が築かれたわけです。そしてアルバムタイトルもこの作品からやたら大仰になり始めたんですよね。なんや、ハイブリッド・ユニバースって。

 

 作風がシフトチェンジする大きな契機となったのは、やはり上松範康氏が手掛けた『ETERNAL BLAZE』でしょ。凛々しくも感傷を孕んだメロディにそれを盛り上げる性急かつシャープなサウンド、全く遠慮のないストリングスアレンジ、タイアップ先アニメでの担当キャラクター・フェイトちゃん目線の歌詞と、名曲たらしめる要素がてんこ盛り。中でも、サビの「まっすぐに受け止める君は光の女神(てんし)」で感極まるトコと、その直後(サビ折り返し)での転調が肝。アニソン特有の熱さとエモさがここでピークを迎えるわけですな。さらに言えば間奏手前の「eternal blaze~♪」はライブにおけるキモヲタ共の盛り上がりの最高潮ポイントとなっていて、図らずもライブの定番曲になり得る要素までバッチリ押さえているというこの隙のなさ。水樹奈々×上松範康による2作目にして早くも完成形が出来上がってしまった感じですね。リリースから10年以上経過した今でもやっぱりこれは名曲。水樹奈々を語る上でもライブに参戦する上でも絶対に外せない曲です。

 

 

 同じく上松範康氏が作曲編曲を手掛けた『星空と月と花火の下』も名曲で、こちらはバラードナンバー。夏の日に終わってしまった恋を季節がめぐるたびに回顧しては泣く、みたいなノスタルジー系の楽曲で、方向性としてはJ-POPによくあるベッタベタなタイプではありますが、冷静を装う平歌に対し、サビではこらえきれずに涙してしまったような泣きメロを聴かせたり、そこにさらなる拍車を掛けようとするバンドアンサンブルと大仰なストリングスアレンジ、涙でメイクが崩れてしまった様を表したような粗雑なサウンドプロダクションが施されていたりと、いやらしいまでに泣かせにかかってきます。『ETERNAL BLAZE』とは作風こそ違えど、この仰々しさはまさしくエレガ(っていうか上松)特有の手口。押しの強さが以前と比べて明らかにエスカレートしちゃってます。好き嫌いがはっきり分かれそうですが、私は支持派。

 

 一方『ひとつだけ誓えるなら』も上松氏が手掛けたバラードナンバーで、いわゆる歌姫系って感じの作風。イントロのファンタジックな響きからして、声優・アニソン界隈の頂に君臨する奈々さんが歌って然るべきなムード満点。フルオーケストラライブで映えること請け合いの楽曲なのに披露される気配が全くないし、そもそも通常のライブですら演ってくれたことがほとんどないという、優雅な装いに似合わぬ窓際族ソングであります。

 

 開放的な爽快デジタルポップス『You have a dream』はエレガが関与してますが(編曲:藤田淳平氏)、どちらかというとアイドル側に位置する楽曲。これはめっちゃ好きな曲です。奈々さんの明朗快活ぶりと奥底に秘めた優しさが感じられる歌唱が良いです。が、如何せん滑舌と英語の発音がアチャーなところがあって、所々なに歌ってっかさっぱり分がんねぇトコがあんだな。英詞は「Don’t worry」以外まともに聴き取れないし、サビの「どこよりも輝く」が「婿よりも輝く」にしか聴こえなかったりと、歌詞カードを見ないと解読できない箇所がちょいちょいあります。

 

 そして今回は奈々さん自身が作詞曲を手掛けたナンバーが初めて登場したのも特徴の一つ。第一子にしていきなりシングル化されてしまった『SUPER GENERATION』はポジティブオーラを照射する爽快ピアノロックナンバー。エレガの藤田淳平氏がアレンジを手掛けてますが、印象としては矢吹氏プロデュース期にちょいちょい見かけたガールポップに近い作風で、そこから時代錯誤感が削ぎ落とされた感じ。ライブでも盛り上がるし、アレンジ非関与と言えどいきなり高いハードルが設定されちまったってくらいに良い曲。

 

 かたや奈々さん第二子である『Violetta』は なかなか掴み所がないユルめのポップナンバー。メロディがやたらふわふわしていたり、バンドアンサンブルや生の管弦、四方八方でミョンミョン鳴る電子音との掛け合わせがなんとも奇妙です。そして、奈々さん特有の当て字も「楽譜 -メロディの地図-」「心電図 -オシログラフ-」「言葉 -キューブ-」と今回も迸ってます。

 

 ケーナという南米発祥の縦笛をフィーチャーした 異国情緒溢れる疾走ロックナンバー『残光のガイア』、元ZYYGのギタリスト・後藤康二氏が手掛けた スパニッシュなギターを絡めた哀愁歌謡デジタルポップス『Faith』、チープなシンセがダサカッコいい感を醸し出す和風ポップロック『WILD EYES』、「リリカルなのはA’s」の挿入歌であるヒロイックなデジタルアップナンバー『BRAVE PHOENIX』、透明感ある癒しのメロディにウルッとくる四つ打ち爽快ミドルポップス『NAKED FEELS』、どのアルバムにもだいたい一曲は用意されてるオシャレぶったウキウキポップナンバー『Love Trippin’』、近未来的なシンセのリフレインが耳を惹くシャープなロックナンバー『Late Summer Tale』、本作唯一の矢吹ソングにして相変わらずすぎる矢吹節が炸裂した『PRIMAL AFFECTION』と、その他の楽曲も漏れなく良きかな良きかな。

 

 全14曲とかなり多めだし、上松を筆頭にエレガがやたら張り切っちゃってるので中々カロリーは高めなのですが、奈々さんの全作品の中だとこれでもまだ控えめというか 後の作品のほうがより高カロリーなので、少食だとか胃下垂になるのが怖いというビギナーさんはこのアルバムから手をつけて腹ならしをするのがベターかも。

 

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