アルバム感想『Passion』 / 大原櫻子


『Passion』 / 大原櫻子
2020.2.5
★★★★★★★★☆☆

01. Amazing! ★★★★★★★★☆☆
02. I am I ★★★★★★★★☆☆
03. Special Lovers ★★★★★★★★★☆
04. 未完成のストーリー ★★★★★★★★★★
05. きらきらきら ★★★★★★★☆☆☆
06. コントラスト ★★★★★★★☆☆☆
07. Grape ★★★★★★★★☆☆
08. Shine On Me ★★★★★★★★★☆
09. REALITY SHOW ★★★★★★★☆☆☆
10. By Your Side ★★★★★★★★☆☆
11. Sing Sing Sing ★★★★★★★☆☆☆
12. 電話出て ★★★★★★★★★★

 

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 オリジナルとしては約1年7ヵ月ぶりとなる4thアルバム。

 

 いきなり言っちゃいますと、思ってたよりもだいぶ面白かった。海外製のポップスやダンスミュージックを踏襲した楽曲もあれば磐石のJ-POPナンバーもあったりと、過去作と比べて全体的にとっ散らかり気味ではありますけど、舞台で培われた歌唱力・表現力が至るところで活かされているし、それによって質や魅力が底上げされてる楽曲が多いし、そのとっ散らかり様が却って面白かったりするので、曲単位でもアルバム単位でもこれはこれで意外とアリなんではないかと。

 

 カッコつけモードのジャケ写を見ると、「なにか大胆なイメチェンでもしたんか?」って思っちゃいそうですが、そんなことはありません。といってもそれは前作の作風を踏まえた上で聴いたならの話ですけど。でも前作から変わったことはいくつかあります。

 

 丸谷マナブ氏が主に作曲を手掛けてるとか、櫻子ちゃんが作詞作曲の両方に携わった楽曲が久々に登場したとか、まあ色々とありますけど、最たる変更点としては、大原櫻子ちゃんのパブリックイメージ形成に大きく影響していたギタ女風情のPOPS/ROCKが少なくなったこと。

 

 ミドルポップナンバー『I am I』や、切なくも爽やかな聴感を残すミドルバラード『Grape』、これらが 骨格としてはギタ女POPS/ROCKに相当する曲になりますけど、『頑張ったっていいじゃない』とか『踊ろう』とか、そういう活発なギタ女POPS/ROCKはほんとに皆無。本作収録のアップナンバーは きまって海外ポップス的なアプローチが導入されており、ここに関しては骨組みから既に作りが別物。ゆえに初期の作風を求めてる人にとっては期待ハズレの内容かもしれませんね。

 

 オープニングを飾る『Amazing!』はアメリカンテイストのエネルギッシュなダンスポップで、なんか西野カナちゃんがたまに演ってそうな感じの作風。極めてオーソドックスな作りではあるけど、曲自体はしっかりしてるし、櫻子ちゃんが持ち前の溌剌さを活かしつつキレよく乗りこなしていて、「この方向性も十分アリなんじゃないのか」と納得してしまえる出来栄え。

 

 シングルにもなった『Shine On Me』はライジングプロダクションちっくな四つ打ちダンスポップも同様ですね。この手のサウンドが私的に好みというのもあるし、櫻子ちゃんの歌声がバッチリ嵌まってるのが良い。

 

 『Special Lovers』はトロピカルハウスを取り込んだミドルナンバー。前作にもトロピカルハウス導入曲はありましたが、成分的には今回のほうが割合高めで、トロピカルハウス特有の癒し要素にフォーカスをあてたサウンドメイキングが大きな相違点。そして、意中の相手に対する「おさえきれないこの気持ち」を露にした天井知らずのハイトーンボーカル。櫻子ちゃんの歌唱における飛躍ぶりが端的に表れた一幕であり、これがあってこそ胸が締め付けられる佳曲に成り上がってるわけですな。

 

 個人的には『未完成のストーリー』が本作のベストな一曲。これもまた骨格だけ見るとギタ女POPS/ROCKにあたる曲で、ここでは心弾む様をより鮮明に体現するかのように軽快な打ち込みアレンジとキュートな味つけが施されてます。そしてサビメロ。1コーラス目では「ストーリ~↓♪」と音を下げて締めているのに対し、ラスサビでは「ストーリ~↑♪」と気持ちの高鳴りに合わせたように音を上げているのですが、この構成によって楽曲にメリハリが出てラストの突き抜けぶりがより際立っているのですよね。名曲っす。櫻子ちゃんの全楽曲の中でもこれがいちばん好きかも。

 

 

 ラストの『電話出て』は一青窈が作詞を手掛けたバラードナンバーなのですが、これがなかなかの衝撃作!歌詞が歌詞なら いい意味でオーソドックスな情熱的バラードになっていたのに、「レジ袋みたく舞った」だの「やい!声殺さずに電話出て!!」だの(ちなみに歌詞カードでは最後の「電話出て!!」が文字大きめに表記されてる)一青節が暴走したヘンテコなフレーズチョイスと それを駆使したメンヘラ歌詞がただならぬ雰囲気を漂わせており、BGM感覚で聴くことを一切許容しない。詞世界を踏まえた上でイントロを聴くと響きがホラーに思えてならないし、櫻子ちゃんの歌唱も、ストーカー気質のめんどくさい女が憑依してんのか、「情熱的」というより「迫真」って感じがするのよな。情念がドロドロ渦巻いてるというか。昼ドラを見終えた直後のような余韻がイヤでも残る締めもなかなかスリリングで、「なんていうんですか切迫感!」って言いたくなっちゃうほど。こんな怪曲ラストに持ってくんなよ笑。

 

 いきものがかり水野印の鉄板バラード『きらきらきら』、ピアノメインの静寂スローバラード『コントラスト』、シャッフルビートのアップナンバー『REALITY SHOW』、ハワイアンテイストのエモーショナルナンバー『By Your Side』、ファンキーなダンスポップ『Sing Sing Sing』といったその他の楽曲もいい感じだし、個人的には前作よりもずっと好みのアルバムです。そもそもシンガーソングライターという立ち位置に居るわけでもないし、今まで以上にポップアイコンとしての有能ぶりを発揮しているし、正直「方向性としてはこれがベスト」とは言いがたいけども、新たな一面を魅せようとする櫻子ちゃんの目論見が吉と出た一作なんじゃなかろうかと思います。

 

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