アルバム感想『#5』/ 凛として時雨


『#5』/ 凛として時雨
2018.2.14
★★★★★★★★☆☆

01. Ultra Overcorrection ★★★★★★★★☆☆
02. Chocolate Passion ★★★★★★★★☆☆
03. Tornado Minority ★★★★★★★★★☆
04. Who’s WhoFO ★★★★★★★★☆☆
05. EneMe ★★★★★★★★☆☆
06. ten to ten ★★★★★★★★☆☆
07. Serial Number Of Turbo ★★★★★★★☆☆☆
08. DIE meets HARD ★★★★★★★★★☆
09. High Energy Vacuum ★★★★★★★★☆☆
10. #5 ★★★★★★★★★☆

 

 

 

 ミニアルバム『es or s』以来約2年半ぶりとなる6thアルバム。オリジナルとしてはなんと約5年ぶりとなるそうです。

 

 かつてのような狂気や緊迫感、曲展開のえげつなさは薄れてきたものの、攻撃性や演奏技術、金属さながらのボーカルは相変わらず強力で、安易に形容し難い時雨ならではの世界観も健在。この期間内、バンドとしてだけでなく 各自ソロ活動も精力的に行ってきましたが、特別そこでの経験をバンドに還元するということもなく、頑なにお馴染みの時雨サウンドを今回も貫徹し構築しているような感じがしますな。

 

 冒頭のダンサブルなオルタナロック『Ultra Overcorrection』からさっそく時雨節全開。TKが内包する変質者的な危なっかしさと 345が醸し出すメンヘラ感を併せたボーカルワークス然り、攻撃性を前面に打ち出しつつ幻想性を携えた美しい音色を絡めたギターワークス然り、出だしから存分に炸裂しちゃってます。

 にもかかわらず、繰り出されるサウンドに翻弄されたりすることなく安心して聴けてしまうんですよね。決してヌルく聴こえるってわけでもなく。そして それはこの曲に限らず全編通して。

 

 前曲に続き磐石の時雨節を貫いた6拍子の疾走ロックナンバー『Chocolate Passion』、ノイジーなギターサウンドが轟きながらも哀愁漂う歌メロが際立った『Tornado Minority』、時雨特有のダークネスを堅持しながらも上空へと向かうイメージの開放感と上昇感を併せ持った『Who’s WhoFO』、ディストーションの洪水が押し寄せる 荒廃的かつ冷えきった空気感に包まれたミドルナンバー『ten to ten』、TKソロワークスの影響が少なからず見受けられるミドルナンバー『Serial Number Of Turbo』と、実は今までありそうでなかった類のナンバーも中にはあるんですけど、これらもいい意味で安心して聴ける楽曲。まあそれがバンド側にとっていいことかどうかはちょっとアレですけど。

 

 

 一筋縄ではいかない曲展開やインダストリアル極まりない絶叫など時雨イズムを惜しげもなく詰め込んだ『EneMe』はどうしても苦しさが窺えてしまうというか、力ずくで凛として時雨を構築することに腐心してるような印象を受けてしまうんですよね。TKの絶叫なんてほぼ ふなっしーやん。元々それっぽい節はあったけど、今はよりその印象が強くなっちまって正直笑わずに聴くのは困難っす。まあこれはこれで面白いからアリなんですけどね。

 

 テクニカルなプレーがスパークした性急なハードロックナンバー『High Energy Vacuum』、ディスコティックなオルタナロック『DIE meets HARD』も好きな曲だけど、やっぱり演奏がやたらめったにパワフルマッチョでなんだか荒い息遣いを感じるし、目ん玉血走らせながら凛として時雨を構築してるってな印象なんですよね。
 ていうか後者は、ドラマ「下北沢ダイハード」の主題歌ということも関係した「SEE MORE GUITAR」が「下北」に聴こえる空耳ワークスや、やたらバウンシーなノリで「イェーッ!イェーッ!!」と高らかに歌っちゃうエセヒップホップ感など、遊び心が多々ぶちこまれていて、これまた面白い。

 

 

 マインドが破裂して内側で渦巻いていた感情が一気に噴出したイメージの『#5』は、ミドルスロー曲ながら時雨ならではの衝動性が本作で最も強烈に発揮されたナンバー。昔と比べて鋭さとか殺気だったものがやや薄れただけで、バンド自体が劣化したりイズムを失ったわけではないんだよなということを改めて気づかせてくれましたね。

 

 これまでとの違いや変化を強いて挙げるなら、元来持ち合わせていたメロディアスさがよりクローズアップさるようになったってことかな。前作もそうだったけど、それ以上に。サウンドの複雑さが緩和されたことも手伝って、「これまでよりは」取っ付きやすくなったし、ベスト盤よりもこっちのほうが手始めに聴く一枚としては最適な感じがする。かと言って、万人受けに傾いた様子は微塵も見受けられないし音楽性に変化は全くないので、これでもやっぱり好き嫌いはハッキリ分かれそう。個人的には、なんだかんだで期待に違わぬ一枚で、これもまた好きなアルバム。

 

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