アルバム感想『無色』 / 上原あずみ


『無色』 / 上原あずみ
2002.11.6
★★★★★★★☆☆☆

01. 無色 ★★★★★★★★★☆
02. Lazy ★★★★★★★☆☆☆
03. Tear Drop ★★★★★★★★☆☆
04. One’s Love ★★★★★★☆☆☆☆
05. ask me ★★★★★★★☆☆☆
06. Special Holynight ★★★★★★★★☆☆
07. Bye Bye My BLUE SKY ★★★★★★★★☆☆
08. Clash!Clash! ★★★★★★★☆☆☆
09. Stay with me ★★★★★★★☆☆☆
10. Deep Black ★★★★★★☆☆☆☆
11. I Love You ★★★★★★★☆☆☆
12. 青い青いこの地球(ほし)に ★★★★★★★☆☆☆

 

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 かつてビーインググループのGIZA studioに在籍していた女性シンガー・上原あずみちゃんの1stアルバムであります。当時18歳だったそうです。

 

 今さらながら、『無色』というアルバムタイトルは言い得て妙だなと変に感心してしまいました。「絶望」だと「真っ黒」とか「闇」とかじゃないですか。本作にはそういった要素も少なからず孕んではいるけど、それよりも「無気力」「投げやり」「腑抜け」など、そんなフレーズを連想させる楽曲が多い気がするんですよね。ゆえに黒でも白でもなく、すっかり色褪せてしまった無色だと。

 

 サウンド的には90年代J-POPや2000年代前半のビーイングサウンドをより簡素にカスタマイズしたポップスが大半で、ここだけ抽出すると「その他大勢」感ハンパないのですが、その楽曲を形成する要素がことごとく危うく、中でも 自己防衛の意も兼ねたマイナス思考が目立つ歌詞と、そのマインドに冒されたような不安定で力不足な歌唱が(良し悪しは置いといて)イヤになっちゃうほど際立ってるのが上原あずみならではの特徴であります。

 

 90年代に一世を風靡した大手プロダクションのビーイングが なしてこんなズタボロな作品を世に出したのかって感じですけど、ビーイングに言わせりゃ、制作側の怠慢でも実力不足でもなく、上原あずみのリアルを突き詰めた結果がこのアルバムなんだと。あずみちゃん自身が綴った歌詞を筆頭に、ビジュアル、歌、サウンドその他諸々、上原あずみという一人の人間をありのまま表現したことコレこそが売りなんだと、そういうスタンスなんでしょうな。ブックレットで、歌詞の中でも特に強く主張したい箇所を強調して文字表記していたり、自身の心象を吐露したあとがきが掲載されてるのを見ると その読みは あながち間違いではないんじゃないかなと。初期の浜崎あゆみを生半可に意識した結果こんな感じになっちまった、などと言ってはならない。

 

 歌詞の中でも個人的に特に引っ掛かったフレーズが、『Lazy』「どんな日もどうにかやって来たから今日もこうして生きていて これからもどうにかしてなんとか生きてゆくのでしょう」。ここだけ切り取れば足取り軽やかと捉えられんこともないけど、全体を俯瞰した際のこのフレーズに蔓延する無気力さときたら。こざっぱりとした軽快でやや明るめな楽曲に乗っかることでより浮き彫りになる言葉の空虚さがどんよりして重いのですよね。頭ん中は無重力レベルでフワフワしてんのに空気はすこぶる重いと。後藤真希とは比較にならんほどのやる気のなさ、これは相当重症ですよ。

 

 これ以外にも、「誰にも弱さを見せられない事は弱い事?誰かに弱さを見せれる事は強い事?そしてそれは正しい事?」(『ask me』)といった 無意味な(別にどっちでもええがなと言いたくなる)自問自答を繰り返してるフレーズや、「自分以外の誰にもきっとね理解できない」(『Bye Bye My BLUE SKY』)、「どんなに誉められたって どんなに頼られたって 愛されなきゃ何の意味もない」(『Stay with me』)といった めんどくささ溢れるフレーズ、「あんなにも満たされたことは今までになかったよ 君の存在が私の全て」(『I Love You』)、「遠くなんか行かないでよ 嫌だよ離れたくない」(『One’s Love』)といったダメンズウォーカー感ハンパないフレーズと、歌詞をサクッと抽出しただけでも上原あずみちゃんのメンヘラぶりがどんだけ重度なもんなのか なんとなく汲み取れるかと思います。個人的には あゆの二番煎じというより、来る(と書いて「きたる」と読む)スイーツ系ブームの先取りという感じがしますな。

 

 てゆーか、数曲で昭和歌謡テイストが前面に出てるのは一体なにゆえ?『Bye Bye My BLUE SKY』『Clash!Clash!』『Stay with me』『青い青いこの地球に』といったアップナンバー群がまさしくそれに該当する楽曲で、コンポーザーが全曲別の人だから単なる作り手の手癖という話ではないと思うんですけど。もしかして、(デビューした2001年10月~本作リリースの2002年11月当時の観点から)来る昭和歌謡のリバイバルブームを見据えての先見的アプローチですか!?さらに言うと『Stay with me』『青い青いこの地球に』はAKB48『スカート、ひらり』(2006)の先取りっすか!?歌が不安定なトコまで律儀に先取りしちゃってますけど、狙いはどうあれ 個人的にはどの曲もまあまあアリです。あまりにもしょっぱいバックトラックをコッテコテの歌謡メロディが辛うじて助けになってくれてることだし。

 

 いちばん好きな曲はやっぱ『無色』ですかね。90sのビーイングサウンドとエイベックスサウンドを混ぜこぜにしたようなアレンジとメロディがくっそ好みでして。にしてもこの歌詞もまた重いな。後追い自殺を仄めかすような内容で、アルバム開幕早々、メンヘラぶりを出し惜しみしないこの強気な姿勢は一体なんなんだと。

 

 なんだかフワついたミドルスロー『Tear Drop』もまあまあ好きな曲。2002年らへんのビーイング丸出しの、当時としてはまさにタイムリーな(あくまでもビーイングの範疇で)音を鳴らしてます。ZARDのシングル『さわやかな君の気持ち』やそのカップリング曲を思い出させる音触り。

 

 『Special Holynight』はタイトル通り クリスマスっぽい雰囲気の曲。「浮かれた気分に乗っかって愛を語ろう」と心弾んでる描写がありながらも、「何だってこんな不器用で遠回りしてしまうんだろう いつだってこんな自分を責めてばかりいたんだ」なるフレーズとか サウンドのぎこちない躍動感とか、浮かれポンチになりきれないトコが如何にも上原あずみという感じが。

 

 『Deep Black』はある意味凄いなって思いました。とにかく全体的に覇気がない。彼女のボーカル以上に打ち込みリズムのやる気のなさが異常だし、ミックスもやたらぼやけてるし、ラスサビ前の「思わない~~(~ぃいぃ~~ぃいぃ~)♪」の(~ぃいぃ~~ぃいぃ~)のエディットが物騒な響きを醸し出していて半ばホラー掛かってるじゃないですか。一体どういうおつもりなのかしらん?「確信犯」と 「やっちまった」の境目がイマイチよく分からんのですけど。

 

 個人的には、自分自身の落ちぶれ様を推し量るためのリトマス試験紙って感じのアルバムです。その日の気分によりけりですけど、たまにチクッと刺さることがあるんですよね、あずみちゃんの言葉が。あずみちゃんのビジュアルに萌え萌えとか、不安定な歌声にそそられるとか、単にビーイング特有のサウンドやメロディが好きなだけとか、そういう人は心配無用ですけど(てゆーか、あずみちゃんの楽曲を能動的に聴いてる人ってそういう人ばっかだと思いますけど)、あずみちゃんの綴るフレーズにピクンッと過敏に反応しちゃう人はメンタルに黄色いシグナルが点灯してるも同然なので要注意のこと。深入りは禁物なり。

 

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