アルバム感想『生きたくはない僕等』 / 上原あずみ


『生きたくはない僕等』 / 上原あずみ
2006.10.18
★★★★★★★☆☆☆

01. 生きたくはない僕等 ★★★★★★☆☆☆☆
02. Never free ★★★★★☆☆☆☆☆
03. 秘密 ★★★★★★★★★☆
04. Song for you ~精一杯力一杯~ ★★★★★★★☆☆☆
05. Shiny way ★★★★★★★☆☆☆
06. U&I ★★★★★★★★☆☆
07. 奇跡 ★★★★★★★☆☆☆
08. 人生ゲーム ★★★★★★★★★☆
09. Maze ★★★★★★★★☆☆
10. Last moment ★★★★★★☆☆☆☆
11. First love ★★★★★★★★☆☆
12. ママレード☆ラブ ★★★★★★★☆☆☆
13. Song for you ~Will~ ★★★★★★★☆☆☆

 

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 かつてビーイングに在籍していた病ンデレラ・上原あずみちゃんの約4年ぶりとなるオリジナルアルバム!一体なにごとでしょうか、この外タレばりの長期ブランクは。

 

 アルバムタイトルからしてかなり重症です。前作のブックレットに「この無色の世界を抜け出したい。綺麗に彩った世界も見てみたい。」と あとがきに綴られてましたが、抜け出すどころかブラックホールばりの闇深き沼に引き摺り込まれちまった感があります。なんだよ、ちっとも病状が改善されてないやん!むしろ悪化しちゃってるっていうね。秋元康とかAcid Black Cherryの題材にされそうなメンヘラ女子の様相をありのまま吐露した歌詞と、ダークさを帯びたポップロックサウンドの掛け合わせという、あずみちゃんの病状(?)に合わせたアプローチが施されてます。

 

 初っ端の『生きたくはない僕等』からいきなり前作以上の無気力ぶりと絶望オーラを臆面なく露呈しちゃってます。楽曲はビーイングっぽいキャッチーな歌メロにちょいとダーティーなアレンジを付け足した程度なのでさほどヘヴィではありませんが、闇っぷりを象っているのは、「生きるべき理由が見つからない やる気が持てなくて目標さえ持てないの」「心が苦しいよ 息も絶え絶えになる」「頑張りすぎなくてもいい あなたはあなただから なまけてる訳じゃないんだ どうか理解して」といったフレーズの羅列、そして単なる歌唱力不足に止まらず、恐ろしいくらいに覇気がなさすぎるボーカル。ぶっちゃけ曲自体はなんとも微妙なトコですけど、「どんな日もどうにかやって来たから今日もこうして生きていて これからもどうにかしてなんとか生きてゆくのでしょう」などと歌っていた前作がまだまともに思えてしまうほど、あずみちゃんのメンタルが如何にリアルガチで深刻な状況かというのがワンコーラス聴いただけでも分かるかと思います。

 

 それに続く『Never free』は、Evanescenceを想起させるゴシカルでダークなヘヴィロックサウンドで一瞬「うぉっ!?」となるも、メロディは良くも悪くもビーイング感ど真ん中だし、演奏もさほどエッジが効いてるわけでもなし。ほんでボーカルはやっぱり気力ナッシングだし、歌ってることは「心が息絶えたなら体も息絶えてしまえばいい 必要のないものはそう消え去ればいいだけの事」と前曲と似たような内容。そりゃあ無気力ボーカルと末期的な歌詞とはフィットしてるっちゃしてるし、あずみちゃんの危うさは一応汲み取れますけども、曲そのものに息吹が感じられないのはマズイっしょ。いまひとつな曲に聴き手に寄越すなよと。

 

 でも同じくEvanescenceチックなメンヘラミドルロック『U&I』は割りと良さげ。サウンドにもうちょっと重厚さが欲しいとは思ったけど、今にも消えてしまいそうな儚げな歌唱が沈殿する空虚さを上手く演出してるし、「重い女」感丸出しの歌詞ともイヤんなっちゃうくらいにマッチしすぎてる。

 

 重い女ソングと言えば『奇跡』『ママレード☆ラブ』もそうですね。前者は想い人と出逢えたことを大仰に美化するキレイめなバラード。後者はストーカー女の片想いを少女漫画タッチで描写したダウナーなポップロック。重い女アプローチ手法が多彩なのか、歌詞に恋が絡むと何やっても重い女に収束してまうのか分からんが笑、メンヘラキャラにブレなく作風が似たり寄ったりに陥らないのはいいこと。

 

 『Song for you~精一杯力一杯~』は、タイトルや開放的なポップロックサウンドからして「あのあずみちゃんが応援ソングを歌ってるって!?」と思いきや、なんだこれは?「うるさいわね、ほっといてよ!(ビーデル風)励ましなんかいらないわよ、こう見えて私だって頑張ってんだから!」っていうのを訴えかけてる楽曲か?まあ激励の言葉が重かったり うざかったりすることは確かにありますけど。

 

 『Shiny way』は前述の「この無色の世界を抜け出したい」という想いをクローズアップしたような楽曲で、生演奏の躍動感もしっかり活きた快活ロックナンバー。あずみちゃんには珍しく明るくポジティブめいた作風でありますが、起点となっているのは「汚れているから笑えないんじゃなくて 汚れていないから笑えないんだ」「笑いたいから笑うんじゃなくって 泣きたくないから笑ってるんだ」といった いつもの(?)鬱屈マインド。曲自体は極めてオーソドックスでも、これもあずみちゃんならではのナンバーといっていいでしょう。

 

 『First love』は前述ナンバー以上に活気あふれるパンキッシュなアップナンバーで、これだけちょっと異色ですね。歌詞は解釈しようによっては重い女系と取れんこともないけど、これは純然たるマーガレットコミック系(純愛系の少女漫画)と考えていいと思います。他アーティストへの提供詞だとこういうヘヴィ要素ナシの歌詞とか書けちゃうのね。しかも意外と歌っててあんま違和感なかったし(もうちょっと声量があったほうがいいけど)。ちなみにこの曲でも完全生演奏が実現しており、それがしっかりプラスに機能してるわけですが、それだったら愛内里菜ちゃんの曲でもちゃんとした演奏陣を招いてやらんかい。

 

 私的には『秘密』がベストな1曲。ベッタベタなビーイングロックすぎて上木彩矢ちゃんとモロ被りですけども、リフがカッコいいし、曲そのものも好感触だし、あずみちゃんのボーカルも他の曲に比べればまともですからね。

 

 あとは『人生ゲーム』もかなり好きな曲。アレンジがアレンジなら渋くてオシャレに変貌しそうなカラッとしたミドルロックでシンプルに良い曲だし、「僕のこの人生がゲームなんじゃないか」という発想や、「僕の心と思考は生きるという事に向かっていない」というどんより重いフレーズなど、メンタルイタイイタイ病を患った中高生像を連想させる歌詞も中々そそられた(?)。

 

 袋小路に行き着くのがオチな自問自答を繰り返す陰気なフォークロック『Maze』も 病ンデレラっぽさを醸成するボイスアプローチの効果が有用した佳曲。今にもリストカットに着手しそうな心模様が綴られた ダークなミドルロック『Last moment』は、どうしようもないあずみちゃんに天使が降りてこない感漂う歌詞の絶望感に 他の要素(演奏・アレンジ・歌など)が全くついてこれてない感じがしてイマイチ。

 

 ちょっと惜しいですね。コンセプトは良いし、演らんとしていることはちゃんと汲み取れるけど、それを実現するにあたって足りてないものが色々ありすぎてる。歌だけを見ても、歌唱の技術、表現力、声量が不足してるし、演奏も曲によってイマイチなものがちらほら。『Shiny way』『Maze』『First love』ではいい仕事してたから技術不足ってことはないはずなんだけど、何か遠慮でもしてんのか?それともミックスの問題?てゆーか演奏陣を起用してんなら数曲と言わず全曲に参加してもらってくれ。『生きたくはない僕等』『Never free』『Last moment』といった アルバムの肝になる 八方塞がりなダークナンバーがどれも本領を発揮しきれとらんぞ。いやあ実に勿体ない。参加者全員が大マジで取り組んだところで売れはしなかったと思うけど、やりようによっては隠れ名盤になり得ただろうし、上原あずみちゃん自体も伝説同然の存在になれたかもしれないだけに、なんとも歯がゆい。まさに あずみマンマミーア!ちなみにこのアルバム、廃盤となってる上にAmazonでも登録が抹消されてますが、メルカリには在庫があるし(2020.3.16時点)、SHIBUYA TSUTAYAでもレンタルで取り扱いがあるんで、今からでも聴くことは可能です。

 

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