アルバム感想『時の扉』 / WANDS

時の扉
『時の扉』 / WANDS
1993.4.17
★★★★★★★★★★

01. 時の扉 ★★★★★★★★★★
02. このまま君だけを奪い去りたい ★★★★★★★★☆☆
03. 星のない空の下で ★★★★★★★★★☆
04. もっと強く抱きしめたなら ★★★★★★★★★☆
05. ガラスの心で ★★★★★★★★★★
06. そのままの君へと… ★★★★★★☆☆☆☆
07. 孤独へのTARGET ★★★★★★★★★★
08. Mr.JAIL ★★★★★★★★★★
09. Keep My Rock’n Road ★★★★★★★★☆☆
10. 世界中の誰よりきっと ~Album Version~ ★★★★★★★★☆☆

 

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 WANDSにとって初めてのフルアルバムですが、カウントとしては2ndアルバムになるそうです。第二期WANDSとしてもこれが初となるアルバム。当初は自分たちのやりたいことを突き詰めたアルバムになる予定だったらしいですけど、楽曲制作期間中に作っていた楽曲(というよりアレンジ)の出来があまり良くなかったことと、その期間中に過去作のセールスが驚異的に伸びたことなどを機に ベクトルを若干修正した模様。

 

 ということで、キーボーディストである大島こうすけが脱退し、代わりに木村真也が加入したことで第二期WANDSがスタートしたわけですが、それによってサウンドにも少なからず変化がありました。

 

 前作は元メンバーである大島こうすけが大半の楽曲でアレンジを手掛けてましたが、本作では主に明石昌夫と葉山たけしの二者が担当しているのですが、それにより、前作のダンサブルなノリを継承しつつ、ポップロックのテイストが強化されてます。言い換えると、やたらソリッドでチャキチャキしてたリズム音が 丸みを帯びて重みが加味されたロックっぽい音になったってことです。そしてメンバーである柴崎浩や上杉昇、大島こうすけ、織田哲郎、川島だりあ、多々納好夫らが手掛けたキャッチーな良質メロもガッチリ完備。

 それにより これまで以上のポピュラリティと(93年当時の)トレンド感を獲得することが出来たわけですが、やっぱりこの90sバリバリのムードや音触りに対する耐性がないと どの曲もまともに聴いてらんないのではないかなと。当時のビーイング特有とも言えるオケヒもバンバン鳴ってますからね。

 

 あと、歌詞についてですが、主にボーカルの上杉昇が手掛けてます(厳密には全曲で関与してるけど、共作の作詞が2曲あるのでこういう言い方)。アーリー90s J-POPでイメージされがちな無根拠ポジティブな歌詞やトレンディドラマ的な歌詞というのがアルバム曲にはほとんどなく、大半の曲で青春の痛みや苦悩が刻み付けられてるのが特徴的。逆に言うと、アーリー90s感ハンパない歌詞ってシングル曲だけですよ、『もっと強く抱きしめたなら』とか『このまま君だけを奪い去りたい』とか。『世界中の誰よりきっと』なんてシナモンロールばりの甘々ぶりを発揮しちゃってますからね。

 

 先行シングルであり、WANDSの代表作の一つでもある『時の扉』はニュージャックスウィングのリズムを敷いたポップロックナンバー。大島こうすけが作曲し、アレンジを明石昌夫が手掛けているのですが、もしアレンジまで大島こうすけの手によるものが採用されてたら ケバ~い感じに仕上がってたんでしょうな。そのテイク 聴いてみたさはありますけど、絶対売れないだろうな笑。危うく一発屋になるトコだったぜ。93年っぽさが強烈に放たれてますけど、こりゃ名曲っしょ。未だに週1以上のペースで聴いてるくらいだし笑。

 

 大島作曲のバラード『そのままの君へと…』だけ可もなく不可もなくな感じなんですけど、サビ前のオケヒがツボを刺激しつつ、切なさと痛みを内包した情感豊かな上杉の歌唱が胸を打つ『ガラスの心で』『孤独へのTARGET』は、個人的にシングル曲に引けを取らない名曲という印象。上杉作詞曲の心落ち着くアコースティックナンバー『Keep My Rock’n Road』も小品ながらこれまた良い曲で、アルバムの中ではクールダウン的な役割を果たしています。

 

 『このまま君だけを奪い去りたい』『世界中の誰よりきっと』といったセルフカバー曲も、原型とは一味違うアプローチを試みていて こちらもなかなか(前者はどれが原型なのか分からんけど、DEENバージョンと比べて、という意味で)。

 

 エバーグリーンな空気感と開放感を有したミドルナンバー『もっと強く抱きしめたなら』は名曲と呼ぶほかないナンバーなんですけども、シングルテイクと異なるギターサウンドを採用してやがるのが余計な仕事。オリジナルのままでええねん!小賢しいことすんなし!

 

 ギターの柴崎浩が作曲を手掛けた『Mr.JAIL』は、本作随一というか唯一といってもいいアグレッシブなアップナンバー。当時「ミポリンと付き合ってるんですか?」的な外野からの疑惑の声があったようですが、それに対する反発を歌ったかのような歌詞ですね。「シャレにならないぜ!」「もうやめてくれ!迷惑なそのLOVE GAME」「Don’t Damn Me」とヤケクソ気味なフレーズチョイスが何気に新鮮だし、「確かに僕はそうSINGIN’ DOLL」と当時から自身をアイドルと揶揄していたりするし、これも上杉自身の苦悩が刻まれた楽曲ではありますが、ちょっとユニークな一面も垣間見えたりして面白い。てゆーか何キーボード張り切ってんねん。オケヒをガンガン鳴らすだけじゃなく、終盤では必殺技をぶちかますかの如くエネルギッシュな音を繰り出したりと、木村真也フリークにはたまらん要素がぎっしり。

 

 そして『星のない空の下で』も同じく柴崎作曲のナンバーですが、こちらはアレンジをWANDSが手掛けています。第二期WANDSにとっては初の自作ナンバーになるわけですね。つってもサウンドはやっぱりアーリー90s感全開なんで、明石昌夫や葉山たけしと何がどう違うのかよう分からんのですけど笑。ただ歌詞は死別したと思わしき友人へ宛てたような内容で、上杉の感傷を湛えた歌唱(「『さよなら』の言葉も届かない」のくだりなんかは特に)も相俟って胸を締め付けられます。

 

 93年を象徴するというか当時のビーイング、ひいてはJ-POPサウンドを集約したようなイメージのアルバムです。今となっては聴き手をかなり厳選してしまうような内容かもわかりませんが、個人的には未だに時々聴くくらいに気に入ってる一枚であります。

 

 ちなみにこのアルバム、シングル『愛を語るより口づけをかわそう』と同時リリースされた作品で、ミリオンセラーを達成しただけでなく双方とも初週から4週連続1位を堅持するという とんでもない記録を残していたりします。未だに破られてないというか一生破られることがなさそうな記録だな。

 

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