アルバム感想『PIECE OF MY SOUL』 / WANDS

PIECE OF MY SOUL
『PIECE OF MY SOUL』 / WANDS
1995.4.26
★★★★★★★★★★

01. FLOWER ★★★★★★★★★☆
02. Love & Hate ★★★★★★★★★★
03. 世界が終るまでは… ★★★★★★★★★★
04. DON’T TRY SO HARD ★★★★★★★★☆☆
05. Crazy Cat ★★★★★★★★☆☆
06. Secret Night ~It’s My Treat~ ★★★★★★★★★★
07. Foolish OK ★★★★★★★★★☆
08. PIECE OF MY SOUL ★★★★★★★★★☆
09. Jumpin’ Jack Boy ~Album Version~ ★★★★★★★★★★
10. MILLION MILES AWAY ★★★★★★★★★★

 

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 約1年半ぶりとなる4thアルバム。

 

 これまでのビーイングメイドなサウンドとは打って変わり、生音重視のオルタナロックサウンドへとシフトしてます。それ以上に大きなトピックとして、これまであった煌びやかな音が控えめになった代わりに重苦しい雰囲気を打ち出すようになったり、また 上杉の綴る歌詞にしても「僕を見つめて最後まで笑い飛ばして」(『FLOWER』)、「残酷な道徳に 心の感覚はうすれてく」(『PIECE OF MY SOUL』)など自傷的な歌詞が増え、さらにはボーカルもよりダイレクトに(主に負の)感情を剥き出しにするようになったりと、随分とダウナーな方向に傾倒しちゃってることが挙げられます。

 

 作詞曲こそほとんど上杉柴崎の二人が手掛けているものの、アレンジは彼らによるものではないからか(葉山たけし、池田大介が手掛けている)、ポップとハードの折衷具合、ダークさやダウナーぶりの匙加減が凄く絶妙なのがいいっすね。ビーイング主導のWANDSナンバーも好きですけど、私的にはこの路線のほうが好みだな。この手のサウンドのほうが上杉のボーカルに合ってるし。

 

 オープニングナンバー『FLOWER』は、荒廃したムードに覆われたハードロックサウンドと自虐的でアイロニカルな歌詞が耳を惹くナンバーで、まさに本作のや当時のWANDSを象徴するような存在。冒頭の不穏なギターサウンド然り 上杉のボーカルしかり、陰りが濃くヒンヤリとした感触があって、もうこの時点で前作までのWANDSとはまるで別モノであることが窺えます。

 

 と思いきや、続く『Love & Hate』はアルバム曲で最もビーイング主導期のイメージに近いナンバーで、前曲で戸惑いを覚えた人はコレを聴いてホッとしたんじゃないでしょうか笑。メロディが明るく爽快で キーボードもこれまでのWANDSとなんら変わりない活躍ぶりを魅せているものの、サウンドは骨のあるバンドアンサンブルによるハードな仕様。前奏でのカラッとしたサウンドと 間奏でのメロウで眩いソロを聴かせるギターも上々。んで歌詞は「鏡を覗き込んで 見えないものとただ 一人きり向き合って もがき苦しむ」と世間からの見られ方と自身が求める理想像とのギャップを描写しており、曲調とは裏腹に実はヘヴィな内容。これもかこいい曲です。

 

 『世界が終るまでは…』は、もうみんな知ってるだろこの曲は!私があーだこーだ言う必要ないやんかと。名曲に決まっとるがなと。まあ敢えて言うならば、本作中この曲だけリズムが打ち込みになってます。音の鳴りが笑っちゃうくらいにビーイングっぽいよな。当時のZARDの曲もこんな感じだし。さらに言うとサビ締めのメロディがZARDの『マイフレンド』とそっくり。まあどちらも織田哲郎が手掛けた曲ですからね。打ち込みと言えど、生音重視でダウナーなムードに包まれた本作において違和感なく嵌まっちゃう程のダイナミズムを有しているので全くの無問題。アルバムのこの流れで聴いてもやっぱ名曲に変わりないっすわ。

 

 『DON’T TRY SO HARD』は、アコースティック色の強いミドルスロー曲。まあ箸休め的なナンバーですよ。と言っても、これまでのビーイングメイドなポップスとは音触りは全く異なるので そこを期待して聴いてはなりません。さらに言うと、歌詞も上杉自身の胸の内を綴ったような内容になっており、ビーイングのシステムに乗っかって稼働していたことに対しての疲弊感や嫌悪感が滲み出ているので 言葉は何気に重い。まあこれは安直な癒し系ソングじゃなく、安らぎを求めている歌ですからね。

 

 『Crazy Cat』はケバケバしさが蔓延したヘヴィロックナンバー。歌メロこそポップだし、何気にキーボードの出番が多めだったりしますけども、サウンドも空気も『FLOWER』と同様に重めだったり、珍しく変拍子が組み込まれてたり、歌詞で堕落ぶりや自暴自棄ぶりをざっくばらんに書き散らかしていたりと、全盛期のWANDSを好んで聴いてるリスナーを篩い落とすかのような仕掛けがあちらこちらにございます。本作随一のディープサイドはここになるんでしょうか。

 

 先行シングルとなった『Secret Night ~It’s My Treat~』はダークさと妖しげな空気感を醸し出したオルタナロックで、こちらも本作や当時のWANDSを象徴する一曲。平歌における這うような低音ボーカルは 難解な歌詞と相俟ってなんとも異質ですが、サビメロはなんやかんやでかなりキャッチー。そんなサビで魅せる上杉の高音ボーカルと終盤のシャウトはこれまでにないくらいにワイルドでイカしてるし、スケール感を伴ってミステリアスな美しさを放つDメロがまた魅惑的。これもまた名曲であります。

 

 『Foolish OK』は少年少女の自殺をテーマにした楽曲。絶望や苦悩の真っ只中に居るようなダークさと そこから這い上がるかのような開放感やふてぶてしさが備わったボーカル&サウンドがシンプルにカッコいい。そして、曲タイトル、そして2コーラス目の「清きものは 汚れたものがあるから 美しいし トランプもジョーカーがなくちゃ なんだか物足りない だからそう簡単には 偉そうに言えないけど」というフレーズが表すように「愚か者上等」を掲げ、自殺を視野に入れている者へ向けて「最上階の柵を越えて自由を探すにはまだ君は早い」と、お前らきっかけが浅すぎるんだと ぶっきらぼうに歌ってるわけですが、このメッセージは21世紀を迎えて久しい今でも十分有効。今はもう生きてく手段なんかいっぱいありますからね。「YouTuber OK YouTuber」とかね。「プロブロガー OK プロブロガー」でもいいし。まあ物言いが物言いなんで、反社会へ誘っているようにも解釈できちゃったりしますけど、実際ギッチギチに作られたビーイングスタイルからの離脱を試み、自身のやりたいことに着手している真っ只中(1995年当時)の上杉が歌っているだけに説得力は十分。そのあと上杉は「逃げちまえばいい ぶち壊しゃあいい」「うまいものは食い尽くしてそれからどこへでも行けばいい」を律儀なまでに敢行してしまったのでその言葉の説得力がさらに倍増。個人的には96年時点での脱退は「自由を探すにはまだ君は早い」って感じだったんですけどもねえ。せめて次のアルバムが完成するまでは残っていてほしかったんですけど、まあビーイング側がオルタナ・グランジ路線の強行突破を容認するわけがないしな。

 

 アルバムタイトル曲である『PIECE OF MY SOUL』は自傷表現を多用して自身の内面を描写したようなミドルナンバー。静と激の対比を利かせることで ハードエッジに振り切ったサビでの擦切るようなヒリツキが際立ってます。中でも2サビ手前のディストーションギターの入りがくそカッコいい。

 

 シングルではビーイングメイドの瑞々しい疾走ポップロックだった『Jumpin’ Jack Boy ~Album Version~』は、アルバムの作風に合わせてカラッとしたバンド仕様に衣替えしていて、賛否両論あるようですけど これはなかなか良いリメイクなんでは。っていうか私はシングルテイクよりも先にこっちを聴いちゃったんで、違和感もなにもないんですけど。間奏がギターソロではなくキーボードメインになっているのが面白いところ。せっかくバンドサウンドに改変したのに なしてキーボードにソロパートをまるまる譲渡すんねんと。

 

 そして、トリを飾る『MILLION MILES AWAY』は第2期WANDSで唯一の木村作曲ナンバーで、私的にはこれが本作のハイライトとなる一曲。本作中でも数少ない キーボードと重厚なバンドアンサンブルが一体となったロックサウンドは壮大かつダイナミックで、まるで傷だらけ血まみれになりながら歌っているかのような上杉のボーカル(特に終盤の「粉々に砕けたガラスのようだ」のくだり)と相乗して実に圧巻。流石は「ライブもアレンジも作曲もすべてにおいてもっと前に出ます!」(94年のB-PASSより)宣言をした木村。上杉も「こいつはただもんじゃねぇな」(94年のB-PASSより)と木村加入当初から薄々察してたみたいだし、それがようやくカタチになったのはめでたいことですが、本作においても第2期においてもこれ一曲だけに止まってしまったのが非常に惜しいです。歌詞は一種の決意表明のようなもんですね。これまでの数曲で出てきた上杉の独白を踏まえた上で見ると、腹括ってんなって感じがするというか、もうビーイングメイドのポップスには戻りゃせんぞと。一瞬の気の迷いでこの道に進んでんじゃねーぞと改めて主張しているように思えます。

 

 以前、公式サイトでは「ポップなサウンドを要求するファンと、ロックな世界への傾倒を歓迎するファンの間で賛否両論を呼ぶ問題作」と謳われてたことがあったそうですが、それってサウンドがポップからハードロックに遷移したこと以上に、楽曲の雰囲気やメンバーの佇まいが やさぐれモードに入ってるのが大きな要因ですよね?そりゃあ「世界中の誰よりきっと優しい気持ちになる」とか「もっと強く君を抱きしめたならもう他に探すものはない」とか歌ってた男がいきなり「PUNK ROCKを聞いてはMilkを飲む老婆」だの「うまいものは食い尽くしてそれからどこへでも行けばいい」だの ぬかしやがったら、かねてからのファンはパニクるに決まってるやんかと。まあ個人的にはいい変化だと思いますけどね。むしろこの路線をWANDSでもっと深く掘り下げてほしかったくらいだし。WANDSのオリアルだとコレが断トツで最高傑作です。

 

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