米津玄師 アルバムレビュー (『diorama』『YANKEE』『Bremen』『BOOTLEG』)

 

 

 先日ついに米さん(?)こと米津玄師の5thアルバムがリリースされたわけですが、ここでは過去にリリースされたオリジナルアルバム4枚(『diorama』『YANKEE』『Bremen』『BOOTLEG』)を 個人の感想をまじえて簡易的に紹介していきます。

 めでたくサブスクも解禁されたことだし、『Lemon』『馬と鹿』『感電』など 最近の曲は好きだけど まだアルバムを聴いたことがないという人は、最新作はもちろん、過去作も是非この機会に触れてみて下さいな。

 

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『diorama』 / 米津玄師
2012.5.16
★★★★★★★★☆☆

01.街 ★★★★★★★★☆☆
02.ゴーゴー幽霊船 ★★★★★★★★★☆
03.駄菓子屋商売 ★★★★★★★★★☆
04.caribou ★★★★★★★☆☆☆
05.あめふり婦人 ★★★★★★★☆☆☆
06.ディスコバルーン ★★★★★★★★★☆
07.vivi ★★★★★★★★☆☆
08.トイパトリオット ★★★★★★★★☆☆
09.恋と病熱 ★★★★★★★☆☆☆
10.Black Sheep ★★★★★★★★☆☆
11.乾涸びたバスひとつ ★★★★★★★★★☆
12.首なし閑古鳥 ★★★★★★★★☆☆
13.心像放映 ★★★★★★★★☆☆
14.抄本 ★★★★★★★☆☆☆

 

 そんなわけで、こちらがインディーズレーベルよりリリースされた米津玄師の1stアルバムであります。元々はボカロP(ボーカロイドプロデューサー)として「ハチ」名義で活動しており、その時期から再生数ミリオンを突破するほどのヒット曲を連発するくらい人気があったのですが、その辺のお話はここでは割愛いたします。

 

 色々と驚かされたことがあるのですが、鳴ってる音云々以前に、作詞や作曲、アレンジ、楽器演奏、アートワーク、さらにはミックスまで米さん単独で手掛けてしまっているのが凄いな。(ただし、マスタリングは別の人)

 

 で、楽曲ですが、基本スタイルは既に独自性を有した状態で ある程度出来上がっています。ただ、ここ数年の楽曲とは様相が異なり、当時の米さんが秘めていた狂気や繊細さ、自己顕示欲など、コミュ障的にはわかりみが深い(数年後に死語化)心模様を緻密に殴り書きした、とことん歪でヒネクレでそれなのにポップに仕上がってるものがほとんど。

 

 具体的には、大半の楽曲で当たり前のように不協和音が鳴らされていたり、変拍子もごく普通に捩じ込まれていたり、アレンジやエディット、その他諸々のアプローチで歪さを打ち出してみたりと、そういう様子がおかしい箇所が至るところで散見されますゆえ、ついつい「お狂いになられてますね」(King Gnu常田風)と言いたくなっちゃうのですよね。

 

 軽快ながら頭おかしいギターサウンドと 奇妙な音色を鳴らして駆け抜ける疾走アップ『ゴーゴー幽霊船』『あめふり婦人』、「ぱ~~っぱらぱぁ~~ぱらぱっぱらぱっぱっぱぁ~♪」と目ん玉ひんむいた状態で口ずさんでるかのようなトチ狂ったスキャットが飛び出す『駄菓子屋商売』とか、アイロニカルなカマ言葉、語感にもしっかり配慮しつつ詰め込みまくった歌詞、終盤で仕掛けてくる 変拍子と ちょっと変わった曲展開と、フックやギミックを詰め込んだ『caribou』など、アップナンバーは基本的にDISCORD!DISCORD!し放題。僕には僕の正義があるんだと。ここで主張を曲げたら生きてる価値がないと言わんばかりの頑強さですよ。

 

 それは聴かせるタイプの楽曲でも同様。他人と分かり合えない哀しさを物語タッチで描写したメロウなミドルナンバー『vivi』でも、右チャンネルで不穏なギターサウンドを鳴らしたりしていて これまたマッドネス。でもコレって単にイカれてる感アピールしてるわけじゃなく、哀愁の影をくっきり浮き立たせるための演出なんですよね。

 

 歪な衝動に駆られてるくせにポップ。天然にして天才のジミー大西みたく 感性の赴くままに描写するわけじゃなく、ソウルジェムの真っ黒ぶりを確信犯的に書き殴ったオルタナタッチのJ-POP、という感じがしますな。全ディスコグラフィーの中では いちばん取っ付きにくいですが、一度ツボるとそう簡単には抜け出せない アリ地獄も同然の作品であります。

 

 

 


『YANKEE』 / 米津玄師
2014.4.23
★★★★★★★★☆☆

01.リビングデッド・ユース ★★★★★★★★★☆
02.MAD HEAD LOVE ★★★★★★★☆☆☆
03.WOODEN DOLL ★★★★★★★★☆☆
04.アイネクライネ ★★★★★★★★★☆
05.メランコリーキッチン ★★★★★★★★☆☆
06.サンタマリア ★★★★★★★★★☆
07.花に嵐 ★★★★★★★★☆☆
08.海と山椒魚 ★★★★★★★☆☆☆
09.しとど晴天大迷惑 ★★★★★★★★☆☆
10.眼福 ★★★★★★★★★☆
11.ホラ吹き猫野郎 ★★★★★★★★★☆
12.TOXIC BOY ★★★★★★★★☆☆
13.百鬼夜行 ★★★★★★★☆☆☆
14.KARMA CITY ★★★★★★★★★★
15.ドーナツホール ★★★★★★★☆☆☆

 

 で、こちらが2ndアルバムにしてメジャー(ユニバーサルシグマ)第1弾となるオリジナルアルバム。

 

 ボカロPの楽曲で散見されるチャカポコしたサウンドメイクや、語感とユーモアを兼備した言葉のチョイス、メロディアスさとリズム感の双方に配慮が行き届いたキャッチーなメロディ、オルタナロックを基調としつつ 柔軟に他ジャンルの要素を取り込みJ-POPとして落とし込む 手広いアプローチと、前作の段階でシルエットとしてカタチになってた米さんっぽさが より濃い味つけを施し 高い訴求力をプラスした上でしっかり確立された感じがしますな。

 

 オープニングを飾る『リビングデッド・ユース』は、米さんの王道の一つである 忙しない疾走ポップロック。ファンキーなギターを筆頭とした弾けるサウンド、一度耳にしたら無意識でも染み付いてまう全世代対応型のポップなメロディ、ヒキコモリからの脱却を試みた歌詞が一斉に躍動するこの楽曲は、本作そして当時の米さんの在り方を象徴する一曲と言ってもいいかも。

 

 

 

 ボカロP成分を大量に注入してさらに性急さを増した『MAD HEAD LOVE』、何事もないような顔して変拍子で疾走し、Mai-Kちっくに「わっはっはは」と笑ってみせるエモーショナルなアップナンバー『WOODEN DOLL』、ストレートなJ-POPに着手して絶大なるソングライティング力をまざまざと見せつけたミドルナンバー『アイネクライネ』、これまたファンキーなギターが躍動するディスコティックな『メランコリーキッチン』、メジャーデビュー曲にしてヒキコモリの密室から踏み出す初めの一歩ソングとなった ドラマティックかつ目を覆うほどの眩さを放ったロックバラード『サンタマリア』、正統派ギターロックナンバー『花に嵐』、奇天烈なギターが炸裂する和風ミドルロック『海と山椒魚』、歌メロや演奏のリズムが気持ちよく弾んだガチャガチャロック『しとど晴天大迷惑』、夕暮れの帰り道を想起させる ほっこりミドル『眼福』、祭囃子をポップロックとして巧みに昇華した『ホラ吹き猫野郎』、2ビートでツタツタ駆け抜ける江戸っ子ポップロック『TOXIC BOY』、またしても和テイストを持ち込んだダンサブルな怪談ポップロック『百鬼夜行』、米さんの妖艶さが溢れ出た幻想的なR&Bナンバー『KARMA CITY』、ボカロP時代の楽曲をセルフカバーした2ビートのポップロック『ドーナツホール』

 といった感じで、どうだ!この幕の内弁当的なラインナップ!この期に及んで米津玄師の音楽は玄人向けみたいに思ってる人がまだ少なからず居るような気がするのですが、こりゃどっからどう聴いても立派なJ-POPじゃないですか。ただ単に既存の売れ線をなぞるわけじゃなく、自分ならではの音楽を如何にして大衆に届けるか。そのことを強く意識したが故のこの仕上がり。「分かりやすさ」「取っ付きやすさ」という観点からすると、本作が米津玄師の楽曲を最初に聴く最適な作品だと思います。

 

 

 

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『Bremen』 / 米津玄師
2015.10.7
★★★★★★★★★☆

01. アンビリーバーズ ★★★★★★★★★☆
02. フローライト ★★★★★★★★☆☆
03. 再上映 ★★★★★★★★☆☆
04. Flowerwall ★★★★★★★★★☆
05. あたしはゆうれい ★★★★★★★★☆☆
06. ウィルオウィスプ ★★★★★★★★★★
07. Undercover ★★★★★★★★☆☆
08. Neon Sign ★★★★★★★★★☆
09. メトロノーム ★★★★★★★★★★
10. 雨の街路に夜光蟲 ★★★★★★★★★☆
11. シンデレラグレイ ★★★★★★★☆☆☆
12. ミラージュソング ★★★★★★★★☆☆
13. ホープランド ★★★★★★★★☆☆
14. Blue Jasmine ★★★★★★★★☆☆

 

 約1年半ぶりとなる3rdアルバム。

 前作から雰囲気も詞世界もサウンドアプローチもだいぶ大きく変わりました。まずは理屈抜きでノれるアップナンバーが減少し、メロウなミドル/スロー系の割合が増加しました。エレクトロニカ的なアレンジを取り入れたものが多く、その影響もあって明らかに音触りが柔らかくなったし、空気感も優しくて温かみがある。ボカロP時代に由来した米さん流ポップロック曲も押さえてはあるものの、味つけは以前よりも薄めで毒性(不協和音や変拍子などヒネクレたアプローチ)はやや控えめだし、歌詞も歪さや不穏さが鳴りを潜め ポジティブさやハートフルさがクローズアップされるようになりました。

 

 確かに歯応えならぬ耳応えは前作のほうが圧倒的に上だけど、個人的には前作よりこっちのほうが好きだな。これまで大半の楽曲で詰め込まれてたフックやギミックが抑えめになった代わりにメロディの訴求力がより高まった感じがするし、アルバム全体から醸し出されるハートウォーミングなムードが心の襞に触れたことも大きな要因ですね。

 

 朝靄が掛かった湖畔の画が浮かぶような美しく壮大なミドルナンバー『Flowerwall』、切なくも温かい エレクトロタッチのスローナンバー『メトロノーム』とか、ブレーメンの音楽隊に投影された切実な思いと ソフトながら踏み締める一歩の力強さが窺える楽曲に泣けてくる『ウィルオウィスプ』とか、本作に関しては聴かせる類のナンバーが軒並み大当たり。

 

 

 

 と言いつつ、forbidden loverばりに空高く舞い上がるイメージを喚起する これまたエレクトロタッチの雄大なアップナンバー『アンビリーバーズ』、めっちゃバンプっぽいメロディアスアップ『再上映』、従来の米さんポップスに近いチャカポコしたユニークポップ『あたしはゆうれい』、米さん流ニュージャックスウィング(といってもブラック成分かなり薄め)『ミラージュソング』といったアップナンバー群もやっぱり好感触ではあるんですけどね。

 

 最初に聴くなら前後作(『YANKEE』or『BOOTLEG』)のどちらかのほうが良いと思うけど、『Lemon』とか『馬と鹿』とかバラード系を特に気に入ってるという人はこのアルバムから聴くのもアリかもしれませんね。

 

 

 


『BOOTLEG』 / 米津玄師
2017.11.1
★★★★★★★★★☆

01. 飛燕 ★★★★★★★★★★
02. LOSER ★★★★★★★★★★
03. ピースサイン ★★★★★★★★★★
04. 砂の惑星(+初音ミク) ★★★★★★★★☆☆
05. orion ★★★★★★★★★☆
06. かいじゅうのマーチ ★★★★★★★★★☆
07. Moonlight ★★★★★★★★★☆
08. 春雷 ★★★★★★★★★☆
09. fogbound(+池田エライザ) ★★★★★★★★☆☆
10. ナンバーナイン ★★★★★★★★★☆
11. 爱丽丝 ★★★★★★★★★☆
12. Nighthawks ★★★★★★★★☆☆
13. 打上花火 ★★★★★★★★☆☆
14. 灰色と青(+菅田将暉) ★★★★★★★★★☆

 

 そしてこちらが、米津玄師が全国区レベルで大ブレイクしたことを明確に決定づけた4thアルバム。

 

 メロディのポップさはこれよりも前から とっくに備わっていたものながら より磨きが掛かった印象を受けるし、サウンドメイクの絢爛ぶりや洗練のされ様などは、これまでとは段違いにステップアップを果たした感があります。

 

 そして、これまでと明らかに違う点が2つ。
 一つは、他のミュージシャンや俳優をゲストに迎えたりコラボレーションしたりと、積極的に他者と手を組んでること。もう一つは、アルバムタイトル『BOOTLEG(海賊版)』の起源にもなってるオマージュ・インスパイアが盛り込まれてること。

 

 前者に関しては曲目を見ればもう明らかですが、まあなんと言っても『灰色と青 (+菅田将暉)』。青春の眩しさと人生の苦味が郷愁漂うアーシーなサウンドに落とし込まれた佳曲で、菅田将暉の泥臭くて如何にも漢っぽい歌唱が米さんの声とも相性が良いし、楽曲にもめちゃくちゃ嵌まってる。

 

 

 

 もう一つ挙げるなら『爱丽丝(アリス)』。これは、ギターにKing Gnuの常田大希、ベースに八十八ヶ所巡礼のマーガレット廣井、ドラムに元パスピエの矢尾拓也といった飲み友メンバーを招いて録られた楽曲で、さらに言うと、常田はアレンジとプロデュースにも携わってます。そんなこともありまして、作風がものっそく初期のKing Gnuっぽい笑。King Gnuが1stアルバム『Tokyo Rendez-vous』をリリースした時期とほぼ同じというのもあって、これまでの米さんとは明らかに違うダウナーでザラついた退廃的音像。これも外部との交流そして化学反応があってこその楽曲ですわな。

 

 で、後者のオマージュ・インスパイアですが、これは主に海外のR&B/HIP-HOPやダンスミュージックに影響を受けたものが多いです。
 米さん流トロピカルハウス『ナンバーナイン』、イントロが『Closer』(The Chainsmokers feat. Halsey)からの引用であることほぼ確実な米さん流トロピカルハウス其の弐『orion』、アンビエントサウンドを駆使した ムーディーかつ幻想的なR&B『Moonlight』、あと これは海外からではないけど、平沢進『MOTHER』に触発されたと思わしき(実際 平沢氏『MOTHER』を自身の人生を変えた一曲として挙げていた)オリエンタルテイストの哀愁歌謡ロック『飛燕』などがそうですね。

 

 そして、コラボとオマージュの双方を押さえているのが『fogbound (+池田エライザ)』。2017年時点の海外トレンドだったトラップを取り込み、池田エライザのコーラスワークを有用したことで 果てのない宇宙をあてもなく彷徨うような浮遊感と虚無感を打ち出した これまた佳曲であります。

 

 米さんの王道サウンドにより一層エッジを効かせたファンキーなダンサブルアップ『LOSER』、一瞬ムーンバートンと思わせといて実は磐石のエモロックだった『ピースサイン』、2コーラス目で饒舌なフロウをかます HIP-HOPタッチのドライなミドルポップス『砂の惑星(+初音ミク)』、世界中の誰よりきっと優しい気持ちになる的ハートフルミドル『かいじゅうのマーチ』、80sタッチのノスタルジックな煌めきが散りばめられた『春雷』など、その他の楽曲も一つ残らず好印象。

 

 ロングセラーによる高水準のセールス実数、リスナーからの支持の高さ、トレンドを捉えつつ 既存の売れ線を安易になぞらないサウンドアプローチなど、様々な観点から2010年代を代表する作品と言っても決して大袈裟ではありません。

 CMやアニメ、TVドラマ、映画など、タイアップ曲が満載なので、そういった点を考慮すると、最初にこのアルバムを聴くのも十分アリかと思います。過去4作で言うと、コレが米さんの中でいちばん好きなアルバム。

 

 

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