アルバム感想『「時間の翼」』/ ZARD

時間の翼
『「時間の翼」』/ ZARD
2001.2.15
★★★★★★★★☆☆

01. Get U’re dream ★★★★★★★★★☆
02. この涙 星になれ ★★★★★★★★★☆
03. promised you ~with P-edition~ ★★★★★★★★☆☆
04. 痛いくらい君があふれているよ ★★★★★★★☆☆☆
05. 窓の外はモノクローム ★★★★★★★★★☆
06. お・も・ひ・で ★★★★★★★★☆☆
07. 明日もし君が壊れても ★★★★★★★★☆☆
08. 世界はきっと未来の中~another style 21~ ★★★★★★★★★★
09. hero ★★★★★★★☆☆☆
10. 揺れる想い(Gomi’s New York Remix) ★★★★☆☆☆☆☆☆
11. 負けないで(Gomi’s 10th Anniversary Special Mix) ★★★★★★☆☆☆☆
12. 時間の翼 ★★★★★★★★★★

 

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 デビュー10周年を迎えたタイミングでリリースされた9thアルバム。といっても、アニバーサリー感はさほどなく、むしろこれまでにないくらい「時代の音を鳴らすよう心がけてる」感があらわになってます。

 

 トレンドをしっかり意識してること自体はいいことだし、その試みが有用してる曲もあるにはあるけど、実際のトコは、かつて時代を牛耳ってたZARDが「時代に振り回される側」になってしまったことが至るところで表れていたりもして、それがどうにも痛々しいんですよね。
 分かりやすいとこだと、1999年〜2001年当時に主流だったブラックミュージックのテイストを導入している楽曲で如実に表出してます。

 

 『Get U’re Dream』『痛いくらい君があふれているよ』ではヒップホップ風味を、『promised you』ではR&B風味をそれぞれリズム音で打ち出してます。

 無理やりトレンディなアレンジを嵌め込んでる感じはなく、ちゃんと曲に見合ったセレクトをしているので、ブラックテイストの導入自体は問題ナッシング。

 でもどういうわけか音が異様に軽いし柔いし、さらには輪郭がぼやけてるしで、なーんか表層だけ取り繕ってる感じがしちゃうんですよね。その上、音のペラさや解像度の低さが初期のBUCK-TICKに比肩するレベルだし、これはなかなか由々しき事態。

 ここでブラックテイストのアプローチを巧みに駆使できていれば「時代の流れに順応できるインフルエンサー」になり得たんですけども、実際のトコは、時代の音に乗っかろうと必死こいちゃってる感がどうしてもね。

 

 特に『痛いくらい君があふれているよ』のラップパート。アレンジとかプロダクトがどうっていう以前にフロウが今ひとつだもんな。そもそもラップとかいらなくない?って話ですけど。でも歌メロはいい意味で盤石のZARDって感じだし、タイアップ先の雰囲気に見合ったサビの穏やかでなんとなく洒落てる風な仕上がりもまあまあ好感触なんですよね。

 

 『Get U’re Dream』はZARDっぽさ無視のヒップホップタッチなダンサブル曲。時代に順応できてるかどうかはさておき笑、これは割と好きだな。

 ちなみに、『Get U’re Dream』のカップリングに同曲の別バージョンが2曲収録されてるのですが、その中でも「Version Three」のテイクがめちゃくちゃ良い!R&Bとハウスを取り入れたアレンジで、まあ歌詞の内容やタイアップ先のイメージとは全然噛み合ってないけど笑、泉水さんの見事な乗りこなし(原曲とはボーカルテイクが違う)も含めて、迷走感や無理して頑張ってる感が微塵もない完成のされ様に感服するほかない超優良テイクなのであります!

 

 『promised you』はオーソドックスなしっとりバラードのようで実はなかなか凄いっすよ。思っくそバブル崩壊ど真ん中のメロディを、Cybersound手腕のザ・Y2Kなアレンジでコーティングしちゃってますからね。なぜこんな薄味のっぺらぼうなアレンジやねんって感じですけど、これはまあまあ好きな曲。

 

 続きまして『窓の外はモノクローム』ですが、リズムやトラック以上にコーラスワークでブラックな香りを醸成してます。これは違和感どころかむしろ超絶アリじゃないですか。自ずと物思いに耽ってしまうノスタルジックな響きがもう絶品だし、上述した3曲に比べれば、厚みや輪郭がまあまあまともなのもプラスポイント。あと、マイケル・アフリックのコーラスワークもいいっすよね。

 なんというか、ZARD版『桜坂』(福山雅治)って感じの曲やな。想い合ってた二人が最終的には別々の道を行くことになった歌詞もそうだし、思い出のかけらが穏やかな風にさらわれて儚く散ってくような雰囲気もまた然りで。多少なりともインスパイアされてるんじゃないですかね。てな感じで、これは時代の音を上手いこと着こなせた佳曲なのでした。

 

 『お・も・ひ・で』もノリだけはうっすらヒップホップちっくですけど、音触りに関してはブラックアプローチを自重。泉水さんのイメージに相応な古風奥ゆかしさを滲ませていて、これもまた良きかな良きかな。

 

 んで、ロックテイストのアップナンバー『この涙 星になれ』『世界はきっと未来の中』。これらは、やたらゴリってるハードエッジなリズム音が特徴的であります。今考えると、これもこれで立派な「時代の音」ですよね。まさしく1999年〜2001年らへんの鳴りで。

 

 シリアスアップな『この涙 星になれ』は、メインとなってるリズム音に加え、コズミック感を演出するデジタルアプローチも楽曲にマッチしていて実にブレイブリー。くそカッケエ!!!!これはほんとアレンジの大勝利って感じですな。

 

 ほんで爽快かつ開放的な『世界はきっと未来の中』。これはシングルテイクがやたら軽快でダンサボーだったこともあって、ゴリゴリなリズムの鳴りが相対的に強烈なインパクトをもたらしてます。なにをそんな張り切っとんねんと。針切りじいさんロケンローやないかと。シングルテイクもいいけど、やっぱりこれだよお母さんと。そんなこんなでこれもアレンジが味の決め手になってる感じですね。めちゃくちゃいい!!

 

 WANDSへ提供した楽曲のセルフカバー『明日もし君が壊れても』は、原曲とアレンジは違えどこちらも退廃的ロッカバラード。仕上がりに異論なし。てか、かなり良い。『この涙 星になれ』『世界はきっと未来の中』ほどゴリってないけど、ダイナミズムを有したリズムも良いです。

 

 まっさらな新曲『hero』はまさかのエロゲ感ハンパないバラード!(後に本当にエロゲのタイアップがついたけど)これもまあ特に異論なし。エロゲといえどそんなチープに仕上がってるわけでもないし。と言いつつ、個人的にはそこまで気に入ってるわけでもないけど笑。

 

 『揺れる想い(Gomi’s New York Remix)』は、清涼飲料水さながらのムードを維持しつつクラブ意識のダンサブルなアレンジを施したもの。仕上がり自体はかろうじてアリって感じだけど、いかんせん尺が長すぎっすわ。どうまかり間違ってもクラブ映えするナンバーになるわけがないし、ぜってーに10分もいらんわこんなん!

 

 一方『負けないで(Gomi’s 10th Anniversary Special Mix)』は、多くの人が連想するデジタルリミックスとは様相がだいぶ異なり、海外からのミュージシャンを多数招いてバンド演奏+金管楽器をフィーチャーしたもの。アリかナシかの二択に絞らずともこれはアリです。けどやっぱ尺が長すぎてマジ勘弁って感じ。絶対8分もいらんやんか。

 

 てか、どうしてオリアルにリミックスとか入れちゃうかな。まとまりも流れもあったもんじゃないし、リミックス抜きにしたって10曲40数分あるんだから、わざわざ収録する必要なくない?こういうのはカップリングに入れとけばええんじゃと。リミックスと10周年っていったい何の関係があるんやと。そもそも誰が律儀に本編と無関係な長尺リミックスを最後まで聴くねんと。回りくどい表現を利用して文字数をかさ増しするWebライターばりにタチの悪い行為やぞ。

 

 そしてタイトル曲である『時間の翼』。時代のトレンドに乗っかってはいないが古臭さや時代錯誤感はなく、それでいて懐かしさと安心感が内包された、普遍的にして不変のZARDらしさが詰まった超絶名曲であります!これまで散々トレンド導入に腐心していたのに、結局こういう鉄板のZARDサウンドが本作最強の1曲になってまうとはなんと皮肉な笑。フェードインで幕開けするイントロは、ちょっとしたドラマの演出っぽくて気に入ってますけど、やっぱり未完成のまま世に出ちゃったのが惜しいな。

 

 ということで、「時代に翻弄されてる」とか「試行錯誤しまくり」とか、そんなイメージがどうしても付きまとう作品ではありますが、決して悪いことばっかりではありません。

 狙いがバッチリ嵌った楽曲も一応あるし、そもそも苦手な曲って1つもないし、お世辞にも「名盤!」とは言い難い上に、そこまで攻めに振り切ってるわけでもないけど、他のZARDのアルバムにはない本作ならではの面白さがありますからね。

 でも、どうせ時代に擦り寄るなら、R&Bやヒップホップじゃなく、椎名林檎とかドゥアズとか『Buzz Songs』期のDragon Ashみたいなオルタナロックに手をつけりゃよかったんじゃないですかね

 

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